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皮肉を愛す女
皮肉を賛す女
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から、そのためにも、自分の命を捨てるような真似はしないで。椎奈」

 そして、正一は出て行く。自分の言うべきことは言い切ったらしい。
 私も彼が言いたいことはよく分かった。白蘭の右腕とでも言うべき彼が、どうしてボンゴレの命をこっそり生かそうとするのかは分からないけど、でも少しでも可能性があるならそれにすがるべきだ。頭はそう冷静に計算する。

 ――――私は彼を撃つのか。大好きで大好きで……昔からずっと、愛している、彼を。
 この目で見て、この腕で狙い、この手で引き金を引くのか。

 正一、貴方は私に彼を殺せと言うの? 心臓は動いているのかもしれない。でも、わざわざ仮死状態にするということは、表向きは死んでいることにするということでしょう? 彼が生きていることはいったいどれだけの人が知ることになるの? 獄寺は? 山本は? 京子ちゃんは、ハルは、両親は……?
 この全員が知るなんて、有り得ないじゃないか! 彼らにとっては、愛すべき人の死は現実なのだ。憂いて自殺をする可能性だってあるじゃないか。
 彼らにとっては、私は沢田綱吉を殺した人間に他ならないじゃないか!

 白蘭に渡された銃に、入江正一から受け取った弾を入れ、沢田綱吉を生かすために心臓を狙う。

 なんという矛盾! なんという皮肉!
 やはり私は、皮肉を引き寄せる女なのだ。


――――いろいろと言ってはみたけれど、でも答えなど分かりきっているのだ。
 白蘭の命令に従うこと、即ちそれはユニの命令。私には、従わないという選択肢は、最初からないのだ。





*





 最大発射数は六発だけの、古い型の銃をホルダーに収める。やっと手に馴染み始めた、大きくて重い、実用には到底向いてない銃だった。白蘭から手渡された、装飾の激しいアンティークのような銃。人を撃ったり、戦闘に使ったり、そういう面で使用するには不便この上ないずしりと重たい銃だが、私はこれを気に入っていた。
 それはもちろん、だれそれから貰ったからとか、そういう理由では、絶対に無い。絶対に。ただたんに、アンティークの物が、昔から好きなだけ。それ以外の理由は、決して存在していないのだ。

 まだ今日は何もしていないのに、ただ歩くだけで疲労が足を突き刺すような気がしていた。柔らかな絨毯をブーツで踏みつけるたび、寝不足の体が悲鳴をあげる。まるで体重が倍になったようだ。原因は、わかりきっている。
 この相棒のアンティーク銃が、重たすぎるんだ。


「やあ、逃げずにちゃんと来たんだね、椎奈チャン」


 何も、見ないようにした。白蘭も、ツっ君も、自分の現実も何もかも。無心になって。考えない、考えない、考えない――――


 白蘭は、話も早々に私に撃つよう合図をしてきた。そ
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