皮肉を賛す女
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のことは気に病まなくても良いから』
何も言えない。言わなくてならないのに。
『だから椎奈、生きて』
咄嗟に電話を切った。ツー、ツー、と無機質な音が鳴る。それをしばらくの間聞いて、私は体が震えているのに気づいた。電話を握りしめる。感情のままに壊してしまいたかったけれど、できなかった。これだけが、私と彼を繋げてくれるものだった。
*
白蘭に、また呼ばれた。単独の任務という話だ。
「これで、ボンゴレ十代目を撃ってほしいんだ」
これ、と言われ差し出されたのはアンティーク調の重そうな銃だった。どう見ても実用的でない。本当に撃てるのかどうか怪しいほどだ。
「どうしてですか?」
「ん? 正チャンから詳しい作戦を聞いてない? まあ、話は簡単だよ。僕とボンゴレで会談をするから、僕の後ろに控えていて、そこで彼を撃ってほしいんだ」
「どうして、私、なのですか?」
「椎奈チャンってさ、ボンゴレの人たちと、仲良かったらしいじゃない?」
「そんなのっ!」
「うん、わかってるよ? 今は椎奈チャンはミルフィオーレの人間だよね。でも、君は前科があるから。簡単に信じることはできないかなぁ」
「……それで、」
「そう、それで今回の命令だよ。君の幼馴染、殺して見せて? そしたら、君を信じるからさ」
私は机の上に置かれている銃を手に取った。私の趣味をどうして知っているのかと尋ねたいくらい、綺麗な銃だった。私の趣味ど真ん中の、銃。
「……はい」
それから私は、閉じこもった。誰にも会おうとせず、何も食さず、声も上げようとしなかった。死んだように生きて、ずっと『このまま死んだらどれだけ良いだろう』と考えていた。
そんな日が何日続いただろうか。入江正一が、私のことを訪ねてきた。
「椎奈! しっかりしろ、何も食べてないらしいじゃないか!」
私は無言を返す。
「椎奈……。お願いだから、話を聞いてくれ。僕は、お前に食事を摂らせるためにここに来たわけじゃないんだ」
無反応。
「…………白蘭さんからの命令は聞いてるよ。それで、この弾を綱吉くんに撃ってほしいんだ。この弾は、撃たれた人間を仮死状態にする。椎奈、これで、白蘭さんを騙してほしいんだ」
やっぱり無反応。
「椎奈! 君が撃たなければ、沢田綱吉は死ぬんだ! これで心臓を撃てば、彼は死なない。いずれ落ち着いたら、彼はまた今までのように生きるようになる! 椎奈!」
ぼんやりと見ていた、彼が手にしている弾を手に取った。普通の弾と変わらない。これを心臓に撃てば仮死状態になれるなんて、嘘みたいだ。
「……椎奈、お願いだ。君は、みんなの希望なんだよ。それで撃ってくれ。――――だ
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