皮肉を賛す女
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知り合いたちの様子などを話して聞かせてくれた。
獄寺くんがどうこう、山本がどうこう、昔一緒に遊んでた公園がどうこう、という話に耳を傾けている間、私はなんとも言えないふわふわとした幸福感に包まれていた。ああやっぱりこの人が好きだ、と実感したら、咄嗟に口が動いていた。
「ねえ、また電話してもいい?」
もちろんだろ、という軽快な声を聞いて、私は長い間忘れていた眠気を思い出した。その旨を伝え自然に電話を切れば、気分が大分上向いていることに気づく。
ああ、大丈夫だ。きっとどうにでもなる。ユニも、γも、白蘭のことも、諦めなければきっと良い方向に進んでいくだろう。
そんな風に思えて、ゆっくりと瞼を閉じる。安心感に包まれた暗闇の中、小さく囁く声が聞こえていないわけもない。(相手はボンゴレの十代目なのに仲良くしてもいいの? いつか敵になるかもしれないのに? そうなったら私はどうするの?)
けれどそんな声も、眠りに落ちる寸前のぼやけた意識は無視を決め込むことにしたようだ。
*
その後も私たちの薄い関係は続く。ほとんどが私から電話をしていて、けれどたまに彼から電話をかけてくることもあった。それは決まって私が精神的に参っているときで、毎回そのあまりにも良すぎるタイミングに、どこかから見ているんじゃないかと疑ったものだ。ボンゴレの超直感ということで、納得はしたのだけど。
会話の内容はいつも同じ。優しすぎる昔話。
彼と離れてから十年も経っていないはずなのに、遠い遠い昔のような気がする。体感にして百年ちょい。それほど昔の出来事のように感じられて、こうして話をしていることが嘘のような気がしてくる。穏やかな今が、現実味を持ってくれない。
現実はいつでも酷いものばかりだから。
我々ミルフィオーレはボンゴレファミリーへ攻撃をしかける計画をたてている。そう聞いたのは私の直接の上司、入江正一からだ。嘘だと詰め寄ったような気もするし、そうかと納得をしたような気もする。正一から何も言われてないから、たぶん問題は起こしていないのだと思う。
でも、その衝撃は私から消えてくれない。ああついに私はツっ君まで傷つけるのか、とふと思ったことも、忘れられそうになかった。
それでも私たちは忙しさの合間を縫って連絡を取って、でも私は大事なことを告げられないまま、ことは大きくなっていった。
*
それは、γたちの隊と一緒にいるときに起こった。
私は元ジッリョネロでありながら、スパイとして潜り込んでいたためジェッソ出身でもあり、白の制服を着ながらも意識は黒に近い。そんなあやふやな存在のため、もっぱらブラックとホワイトのクッション役として使われることが多かった。それ
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