皮肉を歩む女
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ゆらり、ゆらりと揺れるような人生だった。
まるで陽炎のように不規則に揺れ、しかし、暑いとも寒いとも思わないまま、私の十年は過ぎていったような気がする。熱くも無く、冷たくも無く、私の心は揺れ動く。
感じる暇が無かったのだ。感じるゆとりが、全くなかったのだ。
そんな私の大きな感情の揺れは、記憶する限り、たった一度きりだった。
まるで衝撃のような、怒涛の悲しみ。このまま壊れてしまうのでは、と私は思った。いいや、壊れてしまえば、楽になれると思っていたのだ。それほどの悲しみが、私の体から溢れ出るほど、湧き上がる。
愛しい愛しい、あの人の亡骸と真紅を抱きしめながら。
そこに行き着くまでの、私の人生を語ろう。
美しい言葉を使って、飾り立てる必要は無い。ただ、事実を述べていくだけでよいのだ。私が思ったことも含め、ただ書き連ねて行くだけでよいのだ。
悲しみも、苦しみも、嬉しいと思うことさえ無かった。
辛いことも。
楽しいことも。
何も無いまま、私の心は揺れ動く。
ゆらり、ゆらりと。
ただ泣くような、揺れるだけの人生に、少しだけ付き合ってもらいたい。
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