第一章
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ならないか」
「けれどいい噂だな」
錠はまた言ってきた。
「御前も言ってみたらどうだ?」
「俺!?」
「そうだ。御前も何か望みがあればな。どうだ?」
「そうだなあ」
何か少しとぼけた声を出してきた。
「まあそれは内緒な」
「言えないことか」
「誰だってそういうものはあるだろ?」
遊馬は笑ってそう返してきた。
「そりゃ俺にもさ。一つや二つはな」
「だったら行けばいい」
一旦突き放すようにして遊馬に言う錠であった。彼は冷静にそう述べたのであった。
「御前だけでな」
「ああ、そうさせてもらうよ」
こうして白い虹に関する話は終わった。それから彼はすぐに行動に移ったのであった。
同じクラスの九条里奈。小柄で大人しい女の子だ。細面で華奢な感じの女の子である。髪は黒いロングヘアで二重の切れ長の目をしている。クラスの中では地味な女の子だが実は遊馬のタイプなのである。
「彼女を連れて行ってかな」
彼は一人笑いながらそんなことを考えていた。彼は今帰宅途中であった。
「それから。へへへ」
勝手な妄想にも入る。笑ったところで通行人達が引いていた。
「本当ならな。それで俺にも彼女がな」
実は彼は今まで彼女というものを持ったことがない。ひょうきんな三枚目キャラなのであまり縁のないことであったのだ。彼にとっては不本意なことに。
「できるってもんだ」
そんなことを考えながら家に帰り次の日里奈が教室を出たところで自分も教室を出て彼女に対して声をかけたのだった。
「あの、九条さん」
「何?」
その声に気付き彼女は遊馬に顔を向ける。そのうえで彼女に問うてきた。
「あのさ、今度の休みね」
「ええ」
こういうことを言うのには抵抗はない。あっけらかんとした悪く言えば調子に乗りやすい性格なので女の子を前にしてもはにかむことはない。
「裏の山に行かない?」
「裏の山?」
「ああ。よかったらさ」
さりげなくを装って言う。実は彼女もこのことを知っているのではないかと思ったがそれは杞憂であった。これは彼にとって幸運なことであった。
「どうかな」
「裏山ですか」
「どう?」
また彼女に問う。
「駄目だったら別にいいけれど」
ここで少し賭けに出た。こう言えば乗ってくれるかと期待したのである。そしてその賭けに勝った。
「そうね」
彼女はいつもの大人しい様子で応えてきた。
「じゃあ一緒に」
「いいんだ」
「ええ。私でよかったら」
ここで彼がさらに幸運だったのは大人しい里奈は人の頼みを断ることができないのだ。そのことが彼に幸運をもたらしたのであった。なお彼は変に運がいいことでも知られていておみくじでも引くのは大抵大吉だ。
「今度の休みに裏山ね」
「うん」
内心大喜びで頷いた。といっても
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