無印編
誘拐事件・後篇
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剣術家である恭也には、徒手空拳の技術である寸勁には疎いので、知識としてしか知らないので当然である。
人が全力で相手を殴るとき、腕の力だけで殴るのはド素人の技である。
ボクサーでも、腰を落として重心を落とし、腰のひねりをきかして腕に遠心力を乗せたりするものである。
より高い威力で殴るなら全身の筋肉を同時に使用し、それを極めればより小さい範囲の動きで全力を出すことが可能になる。
寸勁はまさにその奥義と言っていいだろう。
はたから見れば、ほとんど動かずに触れただけに見えても、その威力は全力のパンチと同じなのである。
さらに言うならば、武術で重要になるのは『踏み込み』である。
作用・反作用の法則と言う、簡単な物理の法則で言うならば、強く踏み込めばそれと同じ力が足に跳ね返ってくる。
武術家はその力を上手く体を通して拳に収束させるのである。
ましては、地面が割れるほどの踏み込みの力をほぼ100%拳に伝えられる剛の寸勁はまさにトラックの衝突と同じ威力を誇るのだ。
「助かったよ、少年。君のおかげであの人形の動きを限定できた」
「あ、ああ」
「さて、私はこれから誘拐犯たちのところに交渉に乗り込むつもりだが君たちはどうするかね?」
剛が恭也たちに聞いてくる。
しかし・・・。
「危ない!?」
恭也がさくらの後ろの自動人形に気が付いた。
倒したはずの自動人形の一体が剣でさくらを切り付けようとしていたのだ。
そして、そのことにさくら本人は気付いていない。
(まずい!?間に合わない!?)
恭也の位置では神速でも間に合わず、気付いたさくらももう手遅れだった。
(やられる!?)
さくら本人でさえそう思った。
しかし、それは現実にならなかった。
剛が瞬動で音もなく一瞬で近づき、警棒から抜刀して、相手の剣をへし折っていたからだ。
そして、自動人形にとどめの一撃を放った。
「大丈夫かね?」
「は、はい!?ありがとうございます・・・」
さくらは剛にお礼を言った。
その頬が僅かに赤くなっていてことに気付いたのは、忍ただ一人だけだった。
「やはり、全員私についてきなさい。ここにいるよりも安全だろう」
警棒に仕込んでいた鉄砕の刀身が、先ほどの一撃によって砕けてしまい、ホルスターから新しいのと交換しながらそう言ってきた。
「分かりました」
6人は氷村が消えた倉庫に向かって移動し始めた。
「あの・・・」
「何だね?」
「あなたは一体?」
忍がそう思ったのも無理はない。
いくら警察でも、この刑事は自動人形なんて言う非現実な存在にあっさりと対応しすぎだし、持っている装備や先ほどの戦闘能力も、普通の刑事とは言
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