騒がしい春の協奏曲(四月)
第一章 小問集合(order a la carte)
第八話 侍女と鼻血と作戦会議
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ないかな、史。」
「史には奥様の、活き活きとした笑顔しか思い浮かびませんが。」
「だから、それが悪夢なんだって……」
編入する前にあった女性の所作を取り戻そうとか言われながら受けた母さんの講義、思い出すだけで苦虫を噛み潰したような感じになる。
「くっ……」
「……ご心痛、お察し申し上げます。」
「何でだろうね、史に労われるといっそう切ない気分になってくるよ。」
申し訳ありませんという型どおりの答えが返ってくる。
人間、直らないものの一つや二つあるが、この子の物言いもそういった一つだと思って諦めているし認めている。
だからといってそれを受け入れられるほどの寛容な心は、まだ僕には出来ていない。
「今日、いらした方々に対して千早様は随分と御気を張っていらっしゃったようにお見受けしました。」
「そうだね、ばれないようにと気を張る上に参謀になんて任命されちゃったからね。」
「ですが以前よりも明るくなられたかと史は思います。」
「そう……だといいのだけれど。」
失礼しましたと言い残し史は部屋を出ていく。
彼は部屋の姿見に自分の姿を映しながら、何事かを考えていた。
彼は鏡の中に映る自分の顔に手を当てながら、小さくこう零した。
「…千歳さんなら……、本当に何も気にせず楽しめたのだろうに、ね。」
寂しそうな表情の彼の心中を知る者はない。
「さぁ、寝よう。僕に話がある人が居るみたいだしね。」
明るく振る舞う彼を、鏡の中の彼女には、ただ黙ってみることしかできなかった。
……彼女?
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