幽鬼の支配者編
EP.26 ミラジェーン
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ん……無事で、良かった……ホントに、良かった……」
「もう……貴方が泣いてどうするのよ」
「ったく、ミラのそういうとこには一生叶いそうにも無いな」
姉の笑顔で安堵したエルフマンは感極まったのか、息を詰まらせながらも涙を流す。ワタルは、自分も辛いだろうに、それでも優しい笑みを浮かべて弟を心配する彼女に、強さと眩しさを感じて苦笑した。
「ワタル……あっ……!」
その言葉が聞こえていたのか、彼女は身じろぎして、立とうとするが……
「おっと……まだ動いちゃ駄目だ、ミラ」
暴走を止めるために撃ち込んだ“魂威”のダメージと、強制的に“悪魔の魂”を解除させたショックがまだ抜け切れていなかったため、ふらついてワタルに受け止められ、彼に寄りかかる形で支えられる。
予想以上の強さを見せた“悪魔の魂”に手加減などできなかった事もあり、ワタルにはこうなることが予想できた。
そのため、彼に動揺は無かったのだが……ミラジェーンの方は、そうはいかなかった。
「あ、う……」
ワタルにそんなつもりはないのだが、半分抱きしめられた形になってしまい、ミラジェーンは身体が熱くなり、顔が赤くなるのを自覚した。
何かを言おうとしても、口から出るのは意味をなさない音ばかり。諦めたつもりでも、自分が彼に未練を持っていると認識するには十分すぎた。
皮肉にも、その事に気付いたのは暴走している時だった。
“悪魔の魂”の肝である悪魔因子が彼女の制御を外れて暴れていた時も、彼女の意識はぼんやりと残っていた。その時、名前を呼ぶだけで意思を伝え合うエルザとワタルを見て、彼女の中に黒い感情が浮かんだのだ。
それは羨望や嫉妬と呼ばれる感情だった。
否定しようにもできない。
制御を外れた悪魔因子は持ち主の負の感情を強めるが、生み出す事は無い……つまり、彼女の奥底に元々眠っていた感情だという事が分かっていたからだ。
その感情が、ワタルの予測を超えた力を発揮させたのは余談である。
「……ミラ、あまり自分を責めるな。俺たちは仲間なんだ。仲間なら、もちつもたれつが当たり前なんだから」
「うん……ありがとう」
力が入らないのか、礼を言ったもののワタルに身体を預けたまま動かないミラジェーン。
『暴走の記憶が彼女を自責と後悔で苛んでいる』
そう思った彼は、慣れない手つきで泣く子をあやす様に彼女の後頭部をぎこちなく撫でる。
「(仲間、か……分かってた事だけど。……でも、エルフマンも前に進もうとしてる。……私も、前に進まないと……)」
ワタルに礼を言った後、ミラジェーンは意を決した様に顔を上げると口を開いた。
「……エルフマン、ちょっと外してくれる?」
「ミラ?」
「姉ちゃん?」
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