幽鬼の支配者編
EP.26 ミラジェーン
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には、真面目に反論した彼を鼻で笑うようにして、悲しみと悔しさで震える声を誤魔化す事しかできなかった。
「まあ……分かったよ」
「本当か! ありがとう!」
「ッ……じゃあな」
快活に笑って喜ぶ彼。彼が心からエルザを想っている――そう思い知るには十分だった。
そんな彼の笑顔に、その心が私に向く事は無いと、嫌でもそう感じてしまった私はその場から立ち去った。
溢れ出しそうになる涙は、意地でも見られたくなかったから……。
「ミラ姉……」
「大丈夫かい、姉ちゃん?」
「……ああ、もう大丈夫だ。心配かけたな……さ、ギルドに行こうか」
何日か経っても、ギルドに顔を出す気にならなかったのだが……それでも、私の周りにはエルフマンやリサーナがいてくれた。
声を殺して泣いていた私に事情を聞く事無く、ただ傍に居てくれた家族の存在は、落ち込んでいた私には一番の特効薬だったように思う。
心配そうな弟と妹を伴い、何日かぶりにギルドに足を運んだ時……私の目はワタルを探していた。
あんな事があったのに、私は一体何をやっているのか、と思ったが……無意識にそうしてしまうほどに習慣化していたのだ。
「――仕事行くぞ、エルザ」
「分かった。内容は?」
「……誘った俺が言うのもなんだが、内容聞いてから承諾しろよ……『畑を荒らす害獣の保護或いは駆除』だ」
「相変わらず細かいな、お前は……ああ、ミラか」
「お、身体はもういいのか?」
「まぁな……これから仕事か?」
しばらく顔を出さなかった私を心配していたのか、私を見て安堵した様子の二人。
何故、彼の隣に居るのが私ではなかったのか――と、恨めしく思う気持ちが無い訳ではない。
だが、エルザと話す彼の目は温かくて、優しくて……その顔は安らぎを感じていたようだった。
他の女とくっ付かれるよりは、エルザなら仕方ないか……そう思ってしまうほどに、隣同士の彼らの姿は自然そのものだったのだ。
「ああ。行ってくるよ……ミラ、身体がきつければ、あんま無理するなよ」
「心配性だな、ワタルは。ミラの事だから大丈夫だと言っているだろう」
「それは私が頑丈さしか取り柄が無い、と言ってるのか?」
エルザの物言いにカチンといた私は喧嘩腰になってしまう。まあ、いつもの事だ。
「そんな事言ってないだろう。それに、お前がそう感じたなら、自分でそう思っているのではないか?」
「言ってくれるじゃないか……!」
「こらこら、復帰早々喧嘩すんな! エルザも、置いてくぞ!」
「あ、待てって!」
「チッ……おいエルザ、この続きは帰ってからだからな! ……エルフマン、リサーナ、私たちも仕事探すぞ! 絶対あいつらより早く終わらせてやる!」
いつものように些細な事で
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