幽鬼の支配者編
EP.26 ミラジェーン
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悪魔の暴走から解放され、眠るミラジェーンは夢を見る。
ギルドに馴染み始め、故郷を追い出された心の傷が癒え始めた頃の夢、生来の活発さを取り戻し始めた頃の夢だ。
6年前のあの日、闇の中で一人塞ぎこんでいた私はある『光』を見た。
光――それは私と同じ魔法を習得し、私より弱くて魔法も上手く使えなかったくせに、『私を守る』と言ってくれた弟と妹であり……怪我も厭わずに、更に深い孤独へ身を落とそうとしていた私を止めてくれたある男の子だ。
弟と妹は、仕事にしてもギルドで過ごす日常にしても私といつも一緒だったが、男の子の方は……その姿を目で追っていた気がする。
いつからかは分からないが、私、ミラジェーン・ストラウスは、私を温かな光溢れる世界に繋ぎとめてくれた男の子、ワタル・ヤツボシに惹かれ始めていた。
それが分かったのは、ある女の子――エルザもそうだったからだ。
私と同じくらいの力量を持つ、同い年の女魔導士。それだけでも、当時の私には彼女をライバル視するのに十分だったが、私と同じ男の子に惹かれているという事は、その心をさらに後押しした。
『魔導士としても、恋愛にしても、コイツにだけは負けたくない』
そう思っていたのだが……恋愛事に関しては、私は負けを認めざるを得なかった。
「急に呼び出して悪かったな、ミラ」
今から5年と少し前のある日、私は『話がある』と彼に呼び出されて、二人きりで話す事になった。
うるさいエルザもいない。距離を縮める絶好のチャンスだ――――そう思っていた。
「い、いや……あ、あのさ……話って何だ?」
「ん? あー……何と言うか……」
歯切れ悪い言葉を口にして、恥ずかしげに頬を掻き、忙しなく周囲を気にするワタル。
普段は見せない彼の珍しい姿に心臓が大きく脈打ち、顔が熱を持って心が舞い上がってしまったのを、私は今でも覚えている。
もしかしたら――そう思ったのだが……それは思い違いだった。
「……エルザの事なんだけどさ」
「エルザの……?」
「ああ。アイツとよく一緒にいるそうだな」
「……それがどうかしたか?」
何となく嫌な予感がして、胸が痛い位に締め付けられるような感覚を覚えた。
「アイツを……あー、そうだな……見捨てないでやってくれ」
「何だそれ? 喧嘩するなって事ならアイツに言えよ」
「いや、違う。もちろんしない方が良いに決まってるんだが……それはいい。俺が言いたいのは、どんな形であれ、アイツとの繋がりを断ち切らないでくれって事なんだ」
「……繋がりって……大袈裟だな、ワタルは」
「大袈裟なものか。孤独は辛いからな……」
エルザの事を心配そうに言うワタルの顔は真剣そのもので。
当時の私
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