第一話 傷ついた?
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皆は彼女を、聖女だと思っている。でもそれは違う。彼女は、見村まつ季は、あくまでも人間なんだ。
ってことに気付いたのは、最近だった。
見村まつ季は、俺のクラスメイト。今は中3で、2才の頃から親が仲良しでよく遊んでいた幼馴染みでもある。
俺に女友達はいないけど、まつ季は、無意識に男友達のカテゴリーに入っていた。まつ季が、俺のことをどう思っているかはわからないけど、あいつは俺以外に友達がいなかった。
別につまらない奴じゃない。
最低な奴でもない。
ただ意識して友達を作らないようにしていた
そういう奴なんだ。
本人曰く、色々とめんどくさいらしい。
見村が不登校になったのは中2の五月からだった。見村は、友達こそいなかったけれどいじめの対象になるようなタチでもなかった。みんな、見村を恐れていた。最初のうちは。何となく、女王様てきなオーラを放っていたらしい。
俺からしたら笑える事実だけどな、実際に話し掛けてみたら普通に優しい奴だってことが判明したんだそうな。でも、見村は話しかけられたら答えるだけで、それ以上のことはしない。社交的なのに人を寄せ付けない。
見村が不登校になっても俺はとくに心配しなかった。勉強しないくせに成績は学年1位か2位で頭よかったし、後で学校にいかない理由を訊くと「なんか面倒臭いし飽きたから」と言われた。まつ季のことだからそんな理由で不登校になってもおかしくない
あいつは、中学校という環境に意味を見いだせなかった。俺は、馬鹿だからそこまで考えて生きてないっていうのにさ。
……で、まつ季が皆から聖女と呼ばれるようになったきっかけは、ある事故だった。駅のホームに女の子が転落して、そこに居合わせたまつ季が女の子を救助したんだ。電車は思ったよりすぐには来なかったけど、救助の人が駆けつけた時にはもう電車が駅に着いてたから、そのことは新聞にも載ってまつ季も有名になった。で、多少ルックスもよかったし、聖女と呼ばれるようになった。
俺は、まつ季に助けたりゆうを訊いてみた。
「別に死んでもよかったし、なんならあの時死のうと思った」
"死"は、まつ季が一番望んでいることなんだ。到底理解できないかもしれないが、まつ季は、生きることにも意味を見いだせなかった
そんなの、俺だってそうだ。
俺も、まつ季のことを理解できないときがある
この前こんなことを言っていた。
「幸せになるために生きるなら幸せになりたい理由を知っているはずだよね」
誰の名言か…
検索しても出なかった。幸せになりたい理由?
考えたこともない。
見村は、俺とは違う世界に生きてるのかもしれない。
あいつはあまりにも、考えてる。
…で、俺は訊いてみたんだ、純粋な疑問を、あいつにぶつけてみた。
なんで死なないのか。
まつ季はすぐに
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