第二章
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第二章
「本気で思ってるわ」
彼女もそれを否定しはしなかった。
「一緒にいても仕方ないし」
「私はそこまで思わないけれどね」
おばさんは一応はこう話す。
「そこまではね。もう少し考えてもいいのかしらって思うし」
「何度も考えたわ」
おばさんの言葉を遮るようにして返した。
「それはね。けれどね」
「考えは変わらないの」
「絶対にね。旦那が定年するまでは待つけれど」
この辺りは熟年離婚の典型的なパターンであった。夫の定年を待ってから離婚通知書を突き出す、彼女もまたそれをしようというのである。
「その時にはね」
「そこまで言うのだったらいいわ」
おばさんは実はまだ言いたかったがあえて言わないでおくことにした。
「それでね」
「そうなの」
「決めたのならね」
そしてこのことに言及した。
「それでいいわ。好きにしたらいいわ」
「ええ」
彼女もおばさんが何を言いたいのかはわかっていたがそれでもあえてそれはないことにして応えた。こう言ってこの時の話は終わった。
彼女はそれから表面上は何事もなく普通の妻として過ごした。しかし常に離婚のことは考えていた。そうして夫の定年をじっと待っていた。
そんなある日だった。食器を洗ってそれをなおしていると。棚からあるものを見つけた。それは。
「これって」
見ればそれは茶碗だった。二つある。
それは彼女も知っている茶碗だった。しかも非常によく知っていた。何故ならそれは彼女がかつて夫と共に買った茶碗だからだ。結婚したすぐ後に。
「あの時のなのね」
それを見てすぐに食器をなおそうと思った。しかしどうしても見てしまう。そうしているうちに彼女は思い出した。これまでの様々なことを。
彼女が最初の子供を産んで家に帰った時だ。家に帰ると夫が満面の笑顔で迎えてくれた。
「よくやったな」
「よくやったって?」
「子供、産んでくれたじゃないか」
彼はこう言って笑みを浮べるのである。
「子供。よくな」
「そんなに大層なことじゃないのに」
「子供を産むこと程大きな仕事はないだろ」
だが夫は彼女にこう言って返すのだった。
「男だからどれだけのものか身体ではわからないけれどな」
「それでもなの」
「それでもだよ。まあその話はいい」
向こうから話を強引に終わらせてきた。
「それよりもだ。家に入るんだよ」
「え、ええ」
二人は今家の玄関にいた。夫が出迎えていて妻が入ろうとしている。二人は開けられた扉を挟んでそこで話をしているのだった。
「わかったわ。それじゃあ」
「御馳走作っておいたからな」
妻を家に入れたうえでこう話してきた。
「早く食べよう。いいな」
「御馳走って?」
「腕によりをかけて作ったんだ」
左手に力瘤を入れてそこ
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