第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十六日:『夢引き』
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中に一人で近くの川沿いの路を歩いてて。体、言うこと聞かないで勝手に……そしてある場所まで行くと、怖い声が響いて」
「声か……なんて?」
美しい黒髪をさらりと靡かせながら、沈んだ様子で。ともすれば泣き出しそうなくらい。掌に重ねた掌、その上にまた、彼女の掌が重ねられて。
だから、労るように。その更に上に、掌を重ねて。体温を伝えるかのように、『魔術』を浸透させる。
「『もう少しだ、我が供物よ』……って、地の底から響くみたいに低くて、ハウリングしたみたいに耳障りな声が……あはは、恐い系のサイトの見過ぎですよね、きっと」
オープンテラスのこの夏の陽射しの下で、微かに震えた彼女。恐らくは心底恐ろしいのだろう、だがそれすら笑いながら誤魔化して。
そこに感じた、僅かな気配。有り得ざるモノ、ましてや、この少女からは────前にも、何処かで嗅いだ……葉巻の香り。周囲に薄く、風の一吹きで消えたくらいに、極僅か。
「ハハ、ホントにね。これに懲りたら、そう言うサイトは慎む事」
「ですよねー、あはは」
それに乗っかり、茶を濁す。同時に手も離し、ぽん、と頭を撫でた。そこに────
「あれ、どうかしましたか、二人とも?」
「随分と話が盛り上がっていますのね?」
様々な種類のケーキをこれでもかと持った二人が帰ってくる。その気配に気付いた為に。口裏を合わせた訳でもないが、性格が似てでもいるのか、一様に何でもないと誤魔化して。
最後に刻んだ、『鎮静』のルーン。それにより、『恐怖という感情』を鈍らせた意味があったらしい。
「んじゃ、召し上がって下さいませ、お嬢様がた。オイラは、此処で珈琲啜ってますんで」
と、アイスコーヒーの氷をストローてかき混ぜて。『魔術使い』はここまで、後は平々凡々な『学生』に戻って。
「あれ、嚆矢先輩、甘いもの苦手でしたっけ?」
「苦手じゃないけど、どっちかと言えば辛党かなぁ」
「あら、それは誤用ですの……いえ、まさかとは思いますけれど、貴方……」
「いやいや、ソンナマサカー」
「「?」」
等と、失言して黒子にジト目で見られたり。意味が分からなかったらしい飾利と涙子が小首を傾げたり。
後に絡む非日常は、最早無い。平和に、安穏と。日は傾いていく。そんな、『夢』のような時間は。
………………
…………
……
第七学区、そのバス停。飾利と涙子は二人連れだからと黒子を送ろうとして、あっさり断られた流れはテンプレなので割愛して。
去り行くバスに手を振り、見えなくなってから……振り返り、歩き始める。懐から取り出した懐中時計、『輝く捩れ双角錐』の収まるそれを確認する。現在時刻、十六時半。丁度良
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