第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十六日:『夢引き』
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ましたの、お暇ですのね」
「ハハ、そりゃあ来るとも。昼前は散々むさ苦しかったし、口直しにさ」
第七学区のとあるカフェ、先程も巡回の際に通った。テラス席に陣取った、飾利と黒子の姿。そして。
「あ、どうもです、対馬さん。その節は、お世話をお掛けしました」
「やぁ、佐天ちゃん。なんのなんの、もう大丈夫かい?」
「はい、もう元気が有り余っちゃって」
退院したばかりにも関わらず、案外、元気そうな佐天涙子の姿があった。『幻想御手』を使用した者は昏睡こそすれども、一時的に強度が上がったお陰で更なる高みに至る契機を得た者も居たとか。経歴的には、どう見ても汚点だが。
それにしても、先程までのむさ苦しさがまだ、瘧のように。そこでふと、黒子が一つ、咳払いした。
「それにしても、また固法先輩に大目玉を食らったようですのね。全く、少し見直したらこれですの?」
「ああ、あれね。いや、最終的には全員ノリノリだったんだって。あいつら、口揃えて俺に罪擦り付けやがってさぁ……」
と、ツインテールの片方を手櫛で梳りながら、呆れたように。しかし、既に『それ』に気付いている嚆矢には、最早問題ではなく。
四人掛けの席の、最後の席に腰を下ろしながら。少しばかり、面映ゆい気持ちで。左隣のその一点、否、二点を見つめて。
「反省してる、でも後悔はしてない。それは兎も角、早速ありがとう。良く似合ってるよ、黒子ちゃん」
「っ…………?! い、意味がわかりませんの!」
何を誉められたかに、直ぐに気づいた彼女は耳まで真っ赤に染まって。唸るように、座っている都合上、見上げるように彼を睨み付けて。
赤い更紗のリボンを、風に靡かせながら。ぷい、と腕を組み、そっぽを向く。何とも言えず、愛らしい仕草であった。
「あれあれ〜、これはまさか……強敵出現かな、初春〜?」
「い、意味がわかりませんし!」
と、朗らかな空気。昼下がりには丁度良い、間延びして弛緩したテープのような、気の抜けた炭酸水じみた。
──隣に座っても無反応と言う事は、御坂は居ないのだろう。まぁ、昨日の今日じゃ会い難いし有り難いが……しかし、やっぱりムカつくなぁ、あの痩せぎす野郎。完全に世の中舐めきってたよな、あの目は。一発締めときゃ良かったぜ……何てな。どんな能力かも分からねぇで、そりゃ無謀って奴ですよ。
休もうと思考を緩め、無意識を増やせば増やす程、演算力が高まっていく。ある意味では呪いか、これは。夢とは、脳が体験を整理している際に見る物だとも言う。
あの日、第七位にカチ割られて以来、それをしなくなったこの脳が見せる夢とは、即ち現実の記憶に他ならぬ
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