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バス停で
第一章
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「何なのか」
「何となくね。わかったわ」
 またかと心の中で思ったがそれは笑顔の下に隠した。そうして言葉を返すのだった。
「そういうことなのね」
「そういうこと。それで場所はね」
「何処?」
「バス停のところだって」
「ああ、あそこね」
 バス停と言われてすぐに何処かわかった。芭蕉が一面に繁っているその場所だ。そこから紙子のいる高校まですぐなのだ。それで通学路に使われているのである。
「あそこにいるからって」
「ふうん。それで誰なの?」
「さあ」
 今度の返事は実につれないものであった。娘も言葉をはぐらかして笑うだけだった。
「誰かまではわからないのよ」
「そうなの」
「そういうこと。それでもね」
 娘は言葉を続けてはきた。
「待ってるからって」
「一人で?」
「何ならついて行こうかしら」
「それはいいわよ」
 右手をあげて横に振ってそれは断る。仕草がヤマトンチュのものに似てきているのはテレビのせいであろうか。復帰後の特徴の一つでもあった。
「何人かで強引に来たら急所蹴り飛ばしまくって逃げるから」
「随分強引ね」
「そういう奴がいないとも限らないしね」
 今度は腕を組んでの言葉だった。そうした覚悟はいつもしているらしい。女の子として。
「女の必要条件よ」
「まあ強いに越したことはないけれどね」
「そういうことよ。さて」
 ここまで言ったうえでまた言う紙子だった。
「じゃあ今から行って来るわ」
「今からなの」
「ええ。相手はもう待ってるんでしょ」
「多分ね」
 少し考える目になって紙子に答えてきた。
「今さっき伝言頼まれたし」
「伝言なの」
「そっ、あんたに伝えてねって」
 彼女は軽い調子で言ってきた。
「今さっき頼まれたのよ」
「誰からなの?」
「ええと。誰だったっけ」
 また随分といい加減な話だった。しかし首を傾げて考える顔になっているところを見ると本当にわからないらしい。それが顔にも仕草にも出ていた。
「見たことのない娘だったわ」
「見たことのないって」
「一年生なのよ」
 こう言ってきた。なお紙子達は二年である。制服につけている組章の色でわかるようになっているのだ。三年が青、紙子達二年が緑、そして一年が赤なのだ。
「だから知らないのよ」
「じゃあ相手は」
「よっ、年下キラー」
 笑顔になって紙子を茶化してきた。今度は軽い感じだった。

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