第五章
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ゃん好きになってきたわ」
「えっ!?」
今の武蔵の言葉には思わず眉を顰めさせる昌美だった。
「今何て言うたん?」
「だから。昌美ちゃんのお婆ちゃんが好きになりそうて」
「浮気せんといてや」
本気の言葉だった。
「そんなんしたら絶対に許さへんからな」
「わかっとるって。けれど何でそこで浮気なんや?」
「だってうちのお婆ちゃん好きって言うたやん」
昌美は本気でそこに突っ込みを入れるのだった。
「ちゃうん?それと」
「まさか。この場合の好きはな」
「うん」
「惚れたとか愛してるって意味やなくて」
それはくれぐれも言うのだった。彼もまた本気で弁明していた。何だかんだで昌美も武蔵もここはかなり真剣になってしまっていた。
「人として好きって意味や」
「何や、そうやったんか」
昌美はそれを聞いてやっと完全に落ち着いた。
「それやったらええんやけれどな」
「そうや。何か僕もな」
「どないしたん?」
「お菓子作りたくなってきたわ」
にこにこと笑いながらまた昌美に話した。
「これ食べてたら」
「っていうとあれ?」
ここからは昌美にもわかる話だった。
「私と。それ?」
「あかん?昌美ちゃんのお家お菓子屋やさかい」
「当然お菓子作ることになるで」
昌美が祖母に仕込まれているのもそれもそうした理由があるからだった。だから彼女もお菓子を作ることができるのである。だからなのだ。
「それしたいん?」
「昌美ちゃんもおってこんなお菓子食べれて作れて」
武蔵ももうその気だった。
「めっちゃええから」
「じゃあ決まりやな。十八になったらな」
「ああ。それでええかな」
「ええで。白砂糖のことも黒砂糖のこともお婆ちゃんが教えてくれるしうちも教えるから」
「楽しみにしてるで」
饅頭を食べながらにこりと微笑む武蔵だった。そして昌美もその彼に顔を向けて微笑みを返す。黒砂糖は白砂糖とまた違った甘さで二人を結び付けたのだった。
黒砂糖 完
2009・4・16
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