第四章
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んか?」
「ありました」
このことは彼も認めた。
「ですが今は」
「ありませんか」
「消えました」
微笑みが戻っていた。
「それはもう。消えました」
「そうですか。では私と同じですね」
「同じですか」
「私も。不安でしたから」
「けれど今は」
「その通りです。ですから」
「来ましたね」
ここで二人の横に汽車が来た。はじまりの汽車が。
「乗りましょう。いえ、乗れますね」
「不安なら乗れませんでしたね」
愛美は自分の目の前で開く扉に顔を向けつつ修史に述べた。
「この汽車に」
「ですが今は」
「乗れますね」
「はい」
修史は愛美の言葉に頷いた。
「一歩を踏み出せます」
「それでは修史さん」
「はじまりですよ。東京での二人の生活が」
修史は愛美の肩を抱き寄せた。愛美もそれを受けて彼に身を寄せる。そうして二人で寄り添い合いながら汽車の扉へ向かいそこをくぐる。不安が消えた二人にはもう怖いものはなかった。そこには信頼というあらゆるものを照らし出す灯火があり二人はそれを持っていたから。
駆け落ち 完
2008・10・4
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