第三章
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すぐよ」
「来られるのね」
「ええ、来られるわ」
もう一人の愛美が微笑んで愛美に答えた。その顔は確かに愛美のものだった。
「もうすぐね」
「じゃあ待っているわ」
やはりもう迷いはなかった。
「ここでね。待っているわ」
「ほら」
もう一人の愛美がそっと愛美に囁く。
「聞こえてきたわね」
「ええ、聞こえるわ」
確かに聞こえていた。
「あの音が」
「さあ、後は迷うことはないわ」
また愛美に囁く。
「何もね。前を向いて」
「前をなのね」
「そう。前を向いていればそれで」
「信じてね」
「これからもよ」
今だけではないという言葉も出された。
「これからも。いいわね」
「わかっているわ。それじゃあ」
「信じなさい。何時までもね」
もう一人の愛美は最後にこう言って姿を消した。後に残ったのは愛美だけだった。愛美は前を向いて静かに座っている。そこに端整な顔をした洋服の男がやって来た。
「愛美さん」
「はい」
男の声に応えて顔を向ける。やはり左を向いた。
「待ちましたか」
「いえ」
静かに微笑んでその若者、修史に対して応える。
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