第一章
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ていたわよね」
「そうよ」
また頷く愛美だった。
「名前だけは立派だけれどね」
「これは」
「名前はどうでもいいのよ」
愛美の名前は一笑に伏せてみせた。
「それはね。貴女の名前はいいのよ」
「名前はいいの」
「大事なのは貴女」
彼女の心深くに突き刺さるようにして囁いてみせてきた。
「貴女なのよ。貴女自身が」
「私自身・・・・・・」
「その通りよ」
囁きは続く。
「貴女は。ただの農家の娘」
このことを再び愛美に囁く。
「尋常学校を出ただけ。それに」
「それに」
「顔だって普通」
今度は顔についても話す。
「顔だってね。普通だわね」
「私の顔は・・・・・・」
「それに対してあの方は」
見計らったようにまた話を変えてきた。
「どうなのかしら。お顔だって立派で」
「それはそうだけれど」
「背も高くて。そうよね」
「・・・・・・その通りよ」
このことも認めるしかなかった。頷きはしなかったが声にそれは出ていた。
「おまけに。文才もおありで」
「東京におられた頃は詩に小説で有名で」
「天才とまで言われていたわ」
「もう雑誌で引っ張りだこ」
こうまで言われる。
「お役人にも顔が利いてね。いいことばかりよね」
「私と違って」
「お人柄も立派で」
囁きはなおも続く。
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