第26話 初陣 その6
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処でもいい。ただこういった公共業務は年齢による制限がある。だから下請け企業などに潜り込んでいる。一番疑いが濃いのは航路掃宙業者だな。業務は危険で手当も少なく、独自に船を運用できる」
ゲリラ戦に精通している指揮官ゆえに、正規軍や捜査機関の弱点もよく心得ている。その上財団設立の際の苦難から、行政府や企業の盲点も心得ている。
「だから君のように妙なところで切れて、地元や軍内部とのしがらみが薄い若い副官の存在は、彼らにとって悪夢に近かっただろうな。情報分析科や艦船運用科のような専門分野ではなく『戦略研究科』という何処に特性があるか分からない、どの分野にもまんべんなく優秀な人材というのは」
「自分はそんな優秀な人間では……」
「やる気のないエジリ大佐が君に近づいたのも、それが理由だし、証明だ」
「……」
「いま士官学校で教官をしているフィリップ=ドーソンという大佐がいる。そいつも君同様、中尉昇進後すぐにケリム防衛区に配属された。やはり君のように『ブラックバート』の動きを察知して、いろいろと調査した。なかなか読み応えのある調査書だったが、運悪くアグルシャプ星系の行政官の目にとまってしまった」
そしてその行政官は、あらゆる政治権力を使ってドーソンをケリムから遠ざけた。しかも昇進させてまで。
「君も事件発覚がなくあと一ヶ月この地にいたら、大尉昇進は間違いなかったな。惜しいことをした」
腕を組んで腹を押さえながら笑うブロンズだったが、俺はとても笑えなかった。俺がエジリ大佐に出世も目標の内だと言ったこと。彼はそれを聞いてどんな気持ちだっただろうか。
「今回の摘発劇で、どれだけの人が処分されるんでしょうか?」
俺の問いに、ブロンズは笑い声を止めて、俺の顔を一度見た後、腕を組んだままシャトルの天井を見上げた。数分の沈黙の後で、ブロンズは先ほどとは打って変わった重い声でゆっくりと応える。
「君の叔父さんがロバート=バーソンズを捕らえられるか、どうかだな。捕らえられたら死刑になる人間は一人で済む。事件もある程度まで公表され、同盟政府もケリム行政府も支持率を気にして、寛大な処置をするだろう。だが捕らえられなかった場合は、エジリ大佐をはじめとして、かなりの人間の首にロープが掛かる、かもしれない」
「……事件を公表できないから、ですか」
「それもあるが『義賊』などという存在を、同盟政府は認めない。自らの不作為を証明する保身からだけでない。暴力による同盟政府への反逆を認めることになるからだ」
ブロンズの顔は渋い。
「今回の問題は政府の統治権に対する挑戦だ。政府としても全面的に引くわけにはいかないし、軍部も首謀者が元軍人であり、廃品とはいえ戦艦を奪われたという失態もある。良くも悪くも彼一人の組織といってもいい『ブラックバート』を潰したという結果が求め
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