第26話 初陣 その6
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宇宙暦七八六年一月下旬 ケリム星域イジェクオン星系 第七一警備艦隊係留地
カーチェント中佐との会話から一週間後。ケリム星域に向けてバーラト方面から第一艦隊一万三五五七隻が、ジャムシード方面から三個巡視艦隊一八四四隻が、それぞれ侵入を果たす。第一艦隊は両星域の境界宙域で分艦隊および戦隊単位(一六個)に分かれると、おそらくは事前に調査していた有人・無人星系を捜索・掃討していく。主力となる旗艦分艦隊はイジェクオン星系に、そしてグレゴリー叔父が率いる第一分艦隊は一路ケリム星域でもかなり辺境に位置する有人星系アグルシャプへと向かっている。
同盟政府からケリム共和政府首相のみに伝達されたこれら一連の軍事行動に、統合作戦本部から何も聞かされていなかったケリム防衛区司令部も、当然我々第七一警備艦隊も何ら対処することが出来なかった。ただし、防衛区司令部管轄下の憲兵隊のみが秩序だって行動した。
『ボロディン中尉、“明日”はよろしく』
カーチェント中佐から侵攻前夜に因果を含んだ短い通信を受けていた俺は、当日もそれまでと変わることなくリンチの副官業務に従事し、夕刻からエジリ大佐と共に海賊調査を行っている。海賊の襲撃行動パターンについてエジリ大佐と討論している二〇〇〇時。通告もなしに俺とエジリ大佐のいる部屋の扉が『外から』開かれた。ついで慌ただしく部屋に入ってくる複数の人影。先頭に立つ中佐の階級章をつけた憲兵を除いて、他の全員が防護ヘルメットと赤い腕章をした武装憲兵達であり、その銃口のいずれもが俺とエジリ大佐に突きつけられている。俺もエジリ大佐も椅子から立ち上がって手を挙げるしかなかった。
「ちょ、ちょっとお待ち下さい!!」
見覚えがないのでハイネセンの憲兵本部から直接派遣されてきたであろう憲兵中佐の後から、『慌てた表情』のカーチェント中佐がそれに続いて入ってくる。
「一体どういう事ですか!! エジリ大佐とボロディン中尉が何をしたと!? 正当な罪状なく拘束するおつもりですか!!」
「我々憲兵隊は本部命令によって行動している。干渉は不要に願いたい」
憲兵中佐はカーチェント中佐を一顧だにせず、俺とエジリ大佐を細い目で見つめて中佐に答える。
「エジリ大佐およびボロディン中尉。貴官等を同盟軍基本法における機密保護条項および収賄に関する軍事犯罪条項に基づいて拘束する」
「出頭命令ではなく、拘束するのであれば当然令状を持っているであろうな」
そう応えるエジリ大佐の態度は、俺の目から見ても海賊と通じている人間には思えないほど堂々としていた。それに対し憲兵中佐も無表情でジャケットから紙を取り出し、刑事ドラマさながらに令状をエジリ大佐の前で開く。それを手に取ることなく、エジリ大佐は大きく溜息をついてから俺を見て、そしてカーチェント中佐を
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