≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その参
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」と叫んだ。
しかし唐突に逃げろなんて言われても普通は動かない。青色の彼女も、まず自分に言われたのかどうかを考えたような顔をして、次に言葉の意味を咀嚼したような顔をして、最後に何故そんなことを言ったのかを思案するような顔をして、やっとのことで重い腰を上げた瞬間。
五秒が経過した。
「あーあ……。うっわっなんじゃありゃ! えっげつねぇ……」
青色の彼女が座るテーブルに運ばれていく店主の盆の上の料理は、依然俺が食べさせられた≪暗黒物質≫ではなく、≪虹色に輝きながら生物的な動きをする流動体≫だった。
◆
「うぇっ……うぅ……ぐぅ……グェッ……ゲェ……」
蛙の断末魔のごとき鈍い声を出す青色の彼女、もとい名前をインディゴ(相互自己紹介により判明)の前の席に俺は座っている。
決してナンパ目的だとかではない。というかこんな声を出す女性にナンパする男はいないんじゃないだろうか。俺はただただインディゴが心配で(あと救えなかったという若干の罪悪感で)前の席に座ったのだ。そして心配で座ったのだから俺が女性の泣いている顔を見たがっているサドというわけでもない。
確かにクールな美少女が悲鳴とも断末魔ともいえない声を出している光景は中々に背徳的だが俺は人格者なのでそんなことで興奮したりしない。
とはいっても「やっべぇ!見たことねぇ!」と興奮気味に言いながら席に座ったのだから少なくとも野次馬であることは認めるし、サドだと思われても仕方のないことかもしれない。ただしそれは間違いで俺はサドではない。何度でもいう。サドではない。
「あうぅ……ウゲェ……がぁぁぁぁ……」
カタンとスプーンを取りこぼし、喉を掻き毟る様な仕草をしながら大粒の涙をぽろぽろ流している。この店は圏内なので首を掻き毟ってダメージを受けることはないのだが、見ていてすごく痛々しい。あまりにも辛そうなので出切る事なら替わってやりたいぐらいなのだが、この店のシステム上、他の人に出された料理を食べることはできないのだ。本当に可哀相だ。できるなら本当に替わってやりたい。できないけど。
「……同情するよ。その虹色の流動体は常連の俺も初めて見る。もしかしたら低確率で発生する大ハズレなのかもな」
わざとらしく神妙そうな面持ちで言う俺をインディゴは憎らしそうに睨み付ける。しかしぽろぽろ流れ落ちる涙のせいで迫力は一切ない。
俺がごく稀に失敗して食べる羽目になる暗黒物質は焦げきったレモンのような味がするが量自体は少ない。せいぜいレモンサイズの固形物だ。しかし今俺の目の前で潤んだ瞳でいるインディゴの味覚神経に猛威を振るっている虹色の流動体≪コノスパゲッティ≫はスパゲッティ用の大きな器に並々たっぷり入っている。体積
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