暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その参
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する方法もなくはない。プレイヤーは料理が出るまでのおよそ五秒間の猶予時間に逃げ出すこともできるのだ。
 かくいう今の俺も椅子にこそ座ってはいるが、いつでもダッシュできるように椅子ごと体を出入り口に向けている。この店の常連は皆そうやって臨戦態勢で椅子に腰掛けながら注文を頼むので、初見プレイヤーから見れば何事かと思うことだろう。

 なんてことのない。ただの生きる智慧であった。また、救済措置とも言う。

 そんなことを考えていた五秒後、ワイルドボアミートスパゲティがやってきた。ボアのミートスパとは似ても似つかぬそれは、やっぱりとてもおいしかった。

 食後、不本意ながらも二十四時間ダンジョンに潜伏していた俺はうつらうつらと食堂の椅子に腰掛けている。
 
 念のためアラームをセットし、落ちかけた瞼で窓を見る。あまり綺麗とは言えない窓、その向こう側にはトールバーナの門が見えておりそこから人が出たり入ったりしている。
 時間帯にはいつも俺が起き始める頃の朝。ここが現実ならサラリーマンや学生があの門を出入りしていたのだろうか。しかしここはSAO。あの門の下を歩く人々が現実でどんな職業なのだろうが関係はない。この世界では職業という制度はない。ここでの俺達は誰しもが有象無象、一介の剣士でしかないのだ。窓の向こうでプレイヤー達の出入りが多くなっていた。 
 
 夜型の戻ってきたプレイヤーと朝方の出発しにいくプレイヤー達の対照的な表情が交錯する。

 しかしたった今出発したプレイヤーのほとんどが午後四時にこの街へ集うだろう。
 午後四時に、第一回≪第一層フロアボス攻略会議≫が始まる。何人集まるかはわからないが、できれば俺は多く集まることを望んでいる。既にこのゲームが始まり一ヶ月が経とうとしているが、いまだ殆どのプレイヤーが始まりの街で嘆くばかりで攻略しようというプレイヤーはむしろ少数派だ。少数派はいつも心細い。今俺がやっていることは本当に生きるためなのか。みんなと同じで引き篭もって外からの救出を待ったほうがいいんじゃないか。

 そう思うプレイヤーは少なくないし、実際そうやって前線から身を引くプレイヤーも少なからず居た。少数派のためにも、第一層のフロアボス攻略は必要なことなのだ。実績をあたえなければならない。命を危険に冒してまで上げたレベルは価値のあるものだと。今まで戦って死んでいった仲間達の思想は間違ってはいなかったのだと。

 夢うつつのせいだろうか、久々に真面目なことを考えていると聞き慣れた、しかし珍しい(SE)が聞こえてきた。

 カランカラン。

 店内にプレイヤーが入ってきたのだ。しかも珍しい女性プレイヤー。そのうえ珍しいソロだった。
 
 なにげなしにそちらを見る。しかし女性プレイヤーは俺の視線には気づいていな
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