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【艦これ連続短編】想う日々。
夜空に響く想い。
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 この辺りは寒くて、空気がよく澄んでいる。
 空を見れば、見えるのは無数の星。ちょうど、月は満月になって
いる。
 そう言えば、あの時もこんな空だったかな。
 私の中にある記憶が、風と共に蘇る。




「響。」
 背後から、以前の私の名を呼ぶ聞きなれた声。
「なんだい?司令官。」
 いつものセリフ。それでも、いつもと違う響きがあった。
「これ・・・。」
 司令官から手渡されたモノ。紅いマフラー。
「その・・・なんだ。向こうは寒いからな。」
 ふと、目頭が熱くなって行く。
「・・・ありがとう。」
 込み上げてくるものを必死に堪えながら、私はそう言った。
「なに泣きそうになってるんだ。」
 司令官は、にやけながら言う。相変わらず人が悪い。
「・・・。」
「・・・。」
 ただ、何を話す訳でもなく沈黙が続く。
 言わなければならない言葉があるのに、呼吸が出来ない。息を吸
い込むと、堪えていたモノが出てしまいそうで。
 それでも私は言った。


「・・・司令官。」
「なんだ?」
「今まで・・・ありがとう。」
 消えそうな声だった。自分でも情けなるくらいの。
 それでも司令官は、私の最高の上官は聞いてくれていた。
「あぁ。・・・ありがとう。」
 バカ、そこはどういたしましてだとか、こちらこそだろう司令官。
 私の頬を伝う、暖かい雫。
「泣くなよ響。不死鳥に涙は似合わないぞ。」
 司令官はそう言うけれど、司令官も涙を流しているのだから、説
得力が無い。
「ほら、笑えよ。」
 司令官は、そう言っていつもの笑顔を見せてくれた。
 いつもと違うのは、頬に伝う涙。
 私はしゃくりあげそうになるのを堪えるのに必死だった。
 だけれど、私は笑顔を作った。
 自分なりの、精一杯の笑顔。
 不器用で、他人からは笑顔に見えないかもしれない。
 そんな笑顔。
 でも司令官は、私の笑顔を分かってくれた。


「良い顔だ。」
 褒めてくれた。嬉しかった。
 ぼーっと、輸送船の汽笛の音が聞こえた。
「行かなきゃ。司令官。」
 司令官の顔を見た。
 もう、最後かもしれない。
 次第に司令官の顔を見るのが、辛くなった。
「さようなら、司令官。」
 私はそう言って、司令官に背を向けて、輸送船の方に歩いていっ
た。
「響!」
 司令官が、私を呼ぶ。声が震えていた。私は立ち止まる。
「約束だ。」
「・・・。」
「・・・また逢おう。」
 私は、もう一度、司令官の方に向いた。
 そして、震える手で敬礼をした。
 最後に見た司令官は、笑顔だった。
 私の好きな、提督の笑顔だった。


 あれから、どれだけの月日が流れたのだろう。
 冷たい夜の北風を受けて、私は
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