第25話 初陣 その5
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佐に昇進。そして将官への昇進は絶たれている。星区内の人間関係に精通していて(つまり人脈が広い可能性が高い)、作戦行動などの機密にすらアクセスする権利がある。いつもは覇気もなく、艦隊の首席参謀としての日常業務を淡々とこなすだけなのに、この調査に対しては非常に協力的だ。
第一艦隊を動員しようと言ったとき、オブラックが俺をあざ笑ったのを拳で制裁したのは、俺が信頼を寄せるようにする為の劇ではないか? 彼の持ってくる情報を、俺は選別こそしているが最初から否定したことはない。つまりとっておきの情報とやらに毒を混ぜることも数を増やすことも出来る。
頼りないかもしれない。だが原作に出てこないからと俺が先入観で彼を軽蔑しているのは間違いだし、彼は士官学校の成績はどうあれ情報の専門家だ。俺はすぐに地上にいる彼と連絡を取り、地上へと急ぐ。半分居眠りしていたシャトルのパイロットに、後でウィスキーを贈ると約束して臨時宇宙港まで降りてもらい、無人タクシーに乗り込む。彼の家は任務の都合上、宇宙港からはそう遠くない場所にある。
「こんな時間に失礼だと思わないのか、中尉」
玄関に出てきたカーチェント中佐は、ボサボサ頭を掻きながらパジャマ姿で(誰かに似ているが、彼とは違ってカーチェントには奥さんがいる)俺を睨み付けた。だが、もう俺は怯むわけにも、今までの非協力に怒るわけにもいかない。俺は精一杯の謝罪をして、カーチェントに頭を下げた。
「小官の力だけでは『例の問題』を解決できません。是非とも中佐のお力をお貸し願いたいのです」
「……まぁ、とりあえず入りたまえ。ここは寒いんだ」
暖房はとっくに切れている寒いリビングで、俺は手みやげに持ってきたウィスキーのミニボトルをカーチェントに差し出すと、「情報将校に物を贈るなんて、君は本当に首席か?」と呆れられた。呆れつつも、暖房のスイッチを入れてから、いそいそとミネラルウォーターを出すところはらしいと言えばらしいのか。
「……ま、遅かれ早かれ中尉が僕の処に来るのは分かっていたんだが」
水割りを傾けつつ、カーチェントはパジャマ姿でソファに深く腰を落としてあっさりと言った。
「エジリ大佐のことを聞きに来るんじゃないかと思っていたんだけど、違うかな?」
「……そうです。申し訳ありません」
完全に俺の目的も思考もカーチェントには見抜かれていた。呆然となるよりも先に、俺の口からは謝罪の言葉が出てくる。
「いや。こっちも悪いと言えば悪い。士官学校を出て二年目の若造が、ケリムに派遣されてきたことで、余計な事を考えていたんだ」
「余計な事、ですか?」
「グリーンヒル少将のお声掛かりで、首席卒とはいえいきなり艦隊司令官付副官へ着任だ。少将は情報部にも在籍されていたから、何らかの繋ぎを僕に入れてくれると思ったんだが…
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