暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第25話 初陣 その5
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
り達をうんざりさせた挙句、お返しとばかりに手抜き調査をされたとしか思えない。それに加えて誰も協力してくれる奴がいなかっただろう。
「……もっともエジリ大佐以外、誰も協力してくれないのは俺も同じか」

 と、いうことは今後の人生もこうなのか、何か俺が悪いことでもしたのだろうかと、俺は不安を感じざるを得ない。しかしドーソンは僅か半年で任地を移動するか……余程周囲と溶け込めなかったのか、それとも更迭されるほど無能だった……ワケがない。

「フレデリック=ドーソンの履歴書……はさすがに任地選任者以外の部外閲覧禁止か。ただその後に大尉昇進して、異動先は宇宙艦隊司令部参謀本部付作戦四課課員、ね」
 半年の任期で一階級昇進するというのは、余程の功績を挙げたことに他ならない。もちろんドーソンがこのケリムに赴任する前に既に充分な功績を挙げていて、たまたま半年後に昇進したという可能性も否定できない。異動先が宇宙艦隊司令部なのも偶然かもしれない。

 しかし誰かの推挙があれば、人事もそれまでの功績やその人の能力を鑑みて、昇進のタイミングを前にずらしたりすることはある。その代わり、次の昇進のタイミングは間違いなく遅くなることで釣り合いをとっているのだが、もしかしてドーソンの昇進には『誰か』の推挙……それも海賊と繋がりのある人間で、政治権力を持っている者がいたのか。

 政治権力を持った者。軍内部人事にも口がきける大物。ケリム星域でそれだけの実力者となると、ケリム星域全体の地方自治権を持つケリム共和政府の首相か、行政担当参事官、あるいは州議会議長や各有人星系の主席行政担当官。『ブラックバート』が名乗りを上げる前から相応の地位にある者は……いない。首相や州議会議長は選挙で選ばれるし、参事官は首相のブレーンから選ばれることが多い。主席行政官は基本的に官僚だが、行政官クラスまで昇進すると、一ヶ所に長期間赴任することは出来なくなる。赴任先の有人星系との繋がりが深くなり、癒着が産まれる懸念があるからだ。

 これはやはり星域司令部かあるいは第七一警備艦隊司令部の周辺を疑うべきか。しかし、リンチもカーチェントもオブラックもまだ三八歳だ。一〇年前といえば二八歳。その歳では『ブラックバート』と関係を持つことは出来ないし、ケリムに赴任してまだ日も浅い。周辺にスパイがいるか、の確認は必要だろう。……そこまで来ると、俺の労力では調査しきれない。憲兵に協力を求めるのが筋だが、エジリ大佐に答えたように民間人への聴取権限は令状と警察の同行が必要になり、その隙に海賊の協力者は逃げてしまうだろう。ここはエジリ大佐に頼むしかないか……エジリ大佐?

 後数年で退役する老軍人。イゼルローン攻略戦に二回立ち、雷神の槌を二度目撃し生還した勇者。幕僚経験がないばかりに、地方艦隊を巡りここケリムで大
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ