Episode31:暗躍
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…だが奴は、十年も前に我々が道化師に引き渡したはずだぞ…」
一体なにが起こっていると、男は髪を掻きむしった。
☆★☆★
九校戦三日目。男女ピラーズ・ブレイクと男女バトル・ボードの決勝が行われるこの三日目は、九校戦の前半のヤマと言われる。
一高は男子ピラーズ・ブレイクと男女バトル・ボードが各二人、女子ピラーズ・ブレイクから一人が出場する。予定通り、とはいかないが、十分許容範囲内である。
というのを鈴音から聞いた隼人は、一高の奮闘具合に関心していた。
「お兄様、もうすぐスタートですよ!」
深雪が達也を呼ぶ声で、思考の海から浮上する。
現在、隼人含めたいつものメンバーは女子バトル・ボードの決勝の観戦に来ていた。勿論、出場するのは風紀委員長である摩利だ。
達也が席に座った所で、用意を意味する一回目のブザーが鳴った。水を打ったように静まり返る観客席。
二回目のブザー。スタートが、告げられた。
開始直後、先頭に立ったのは摩利。だが予選とは違い、彼女の背後には二番手がピッタリとくっついている。それに少し遅れる形で三番手以降がバラバラにスタートダッシュを切った。
「やはり手強い……!」
「さすがは『海の七高』」
「去年の決勝カードですよね、これ」
波が激しく立つのは、二人が魔法を打ち合っている証だ。スタンド前の長い蛇行ゾーンを過ぎ、摩利と七高の選手はほとんど差がつかぬまま鋭角コーナーに差し掛かる。ここを過ぎればスタンドからは見えず、スクリーンによる観戦となる。なんとなしに、隼人は視力を上げた。
だから、それに気づくことができた。
パチリ、と七高選手の右腕、ちょうどCADの部分でなにかが弾けた。
「アレは…!?」
「あっ!?」
「オーバースピード!?」
誰かが叫んだ時、七高の選手は大きく体勢を崩していた。ボードは水を掴んでいない。飛ぶように水面を滑る七高選手の前には、摩利の姿。
背後からの気配に気づいた摩利が振り返る。
そこからの反応は、見事の一言に尽きた。
『ある一つの異常』がなければ。
摩利が前方への加速をキャンセルし、水平方向の回転加速に切り替え。魔法と体捌きの複合でボードごと飛んでくる七高選手に向ける。暴走している七高選手を受け止めるべく、新たに二つの魔法をマルチキャスト。
突っ込んでくるボードを弾き飛ばす為の移動魔法と、相手を受け止めた衝撃で自分がフェンスに飛ばされないようにする為の加重系・感性中和魔法。
本来なら、これで事故は回避できただろう。本来ならば。
不意に、水面が沈み込んだ。誰も気づかないような、ほんの僅かな変化。だが、座標を精密に指定することが条件の現代魔法の発動にズレを生じさせる
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