第一章 紅魔館
Part3 十六夜 咲夜
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それは一瞬の出来事だった。
咲夜が首元の懐中時計に触れる。
瞬間、咲夜の立っていた位置が変わり、目の前にはナイフが一本、罠のように刃を此方に向けながら待ち構えていた。
そのナイフはまるで、移動してきたのではなく、その場に前触れもなく転移してきたかのようにその場に佇んでいる。
そのナイフの存在に気付くが、空中を浮いているためか体のコントロールが効かない。
「ッ!切れ味を0!」
咄嗟に叫んだ言葉。
ナイフへ顔面から激突する。
まともに顔面へナイフが突き刺されば、まあ死ぬことはないだろう。だが、顔面の皮膚や肉が割かれ、相当な激痛が襲いかかる筈だった。
しかし、『切れ味が0』になったナイフなど、もはやその辺の木の棒にも劣る殺傷能力しかない。
コトンと、役目を終えたナイフは力なく床へ転がった。
ようやく体も床へ降り立ち、急いで咲夜のいる方向へ目を向けた。
そこには驚愕を露わにした咲夜が、目を見開いた状態で立っていた。
「能力・・・ね?どんな能力かは知らないけど・・・」
再度、咲夜は懐中時計へ触れる。
「私には関係ない」
さっきと同じだ。前触れも無くナイフが転移し、咲夜自身の位置も瞬間的に変わる。
咲夜の能力は何だったか?と考えながら動きを観察する。
ナイフが数十本、自身を取り囲むように配置されているが、気に止める必要はないだろう。何故ならば、設定はそのままなのだから。
ナイフが牙を向き、一斉に襲いかかってくる。だが、そのナイフ達は当然のように弾かれていく。
そろそろ余裕が出てきた、ここで少しでも反撃しておくか?
と考えていたその時、目の前が白く染まった。
次の瞬間、顔面に激痛が走った。まるで顔を殴られたかのように、上半身が仰け反る。
「いっツ!?」
バランスが崩れた体へ、更に追い打ちをかけるように咲夜の拳が放たれた。
腹部に痛みが走る。
「ゴガッ!!うっ、くっ・・・『移動速度を100』に!」
携帯の能力を全力で使う。なんで違和感もなくそれを使えるのか、自分でも不思議だったが、それを考える時間はない!
床を全力で蹴る。
と同時、目の前にいた咲夜の姿が一瞬で遠ざかった。
咲夜の位置が変わった訳ではない。単純に、視認しきれない程の速度で後ろに下がっただけのこと。
普通ならまあ無理だろうが、移動速度を上昇させたのだから出来ないことはないだろう。
・・・そこまで詳しく、この『携帯』の事を知っているわけでも無いが。
「ふん、かわしたわね」
床へ着地した俺の耳へ、咲夜の声が吸い込まれる。まるで、『すぐ近くにいるような音量で』。
顔を上げてみると、そこには距離を取った筈の咲夜が目の前にいて、拳を握
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