トワノクウ
第十七夜 黎明の神鳥(一)
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子が用意してくれた夜着を滑り落とす。朝霧にさらされた裸体のどこにも傷痕はない。それは薫と潤がくうにつけた傷さえ忘れさせてくれた。
くうはドレスに着替える。どこに行けば梵天に会えるだろうか。宿を貸してもらった者として朝の挨拶をしたい。
そっと様子を窺いながら部屋を出てみた。誰もいない。しんとした廊下と、突き当りに階段があるだけだ。
くうはその階の部屋を回って声をかけ、中を覗いたが、どこにも梵天たちはいなかった。
外出していない限りは別の階にいるだろう。
階段を登った。上層から検めることにした。下層から探すと、いなかった時に最悪五階分を登り直しになるが、上からなら、降りる分だけ楽だからだ。
元いた階で行ったのと同じ作業をくり返し、くうはついに最上階に着いた。妖の中で一番偉いのだから予想されて然るべき居場所である。
最上階への階段は直接広間につながる形になっていて、顔を出すと梵天と空五倍子が座っているのが見えた。
足音で気づいたのだろう、二人ともくうをふり返った。
「おはようございます」
とんとん。じきに階段を登り終える。
「梵天さ」
最後の一段でこけた。顔面から。
「白鳳ーっ! 大丈夫であるか!?」
「だ、だいじょぶです〜」
ぶつけた額より梵天に失態を見られたダメージのほうが大きい。
(これだからドレスはっ!)
くうは見た目だけでこの衣装をセレクトしたのも忘れて裾を叩いた。
「お、おはようございます」
梵天は笑っている。にやにや、という擬音が似合う笑みだ。絶対面白がっている。
「おはよう。てっきり昼まで起きてこないかと思っていたよ」
「自然と目が覚めまして」
くうは転んだままの姿勢を正して梵天に頭を下げた。
「泊めていただいてありがとうございます。あと、遅くなりましたが、昨夜も、助けていただいて、本当にありがとうございます」
頭を上げると、梵天の満足げな貌。
「礼儀はわきまえているようだね。その姿形だからどれだけ人を食った性格かと気を揉んだが」
「――お母さんですか」
くうの外見は母・萌黄に酷似しているらしいことは、母の若い頃のアルバムを見て知っていた。梵天は母の知り合いらしいから、心配されるのも当然だろう。
「あの、ですね。気を悪くしないでほしいんですけど」
アルバムで連想したことを、くうは口に乗せた。
「梵天さん、私の叔父さん――母の弟さんによく似てるな、って。ごめんなさい! 深い意味はないんですっ」
「その叔父とやらは、千歳緑という名じゃないかい?」
「そうです! どうして……」
「俺がその千歳緑だから」
「――は?」
梵天は、くうのその顔が見たかっ
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