第24話 初陣 その4
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に入れてくるのかというような機密まで持ってくる。その顔も、遠征前のやる気のないものとは正反対で、一〇歳は若返ったと思えるほど生き生きしている。
エジリ大佐の覚醒はとにかく、分析だけは俺が一人でやらざるを得ない。俺自身の新年のお祝いは、叔父の家に直接メールカードを送るだけだ。グレゴリー叔父に一枚だけ。それで叔父なら分かってくれるだろう。だが情報を得てから戦力規模を算出し、出動態勢を整え、憲兵・査閲各部との調整を終えて出動するのは、基礎情報を手に入れてから大体二週間は必要だろう。その前に作戦立案と統合作戦本部および国防委員会の出動許可を得る必要があるから、まず四週間というところか。
四週間。おおよそ一ヶ月で『ブラックバート』の概要とその背後関係を洗わなければならない。しかも誰の手も借りずに、副官業務をこなしつつだ。これはなかなかハードな仕事になる。
「君はなぜ、そこまで熱心に追求できるのかね?」
一〇年来のD星区近辺における民間開発プロジェクトについての情報を持ってきた、エジリ大佐の質問に俺はやや困惑した。
「なぜ、と仰られましても……宇宙海賊は正統な経済活動を、武力を持って侵犯する犯罪集団であり、その追及・撃滅は同盟軍人としての主任務の一つであると考えますが?」
「いや、そういう根拠を聞いているんじゃない。なぜ君はこの事案をそれほどまでに追求したがるのか、という君の正直な気持ちに私は興味がある」
「そうですねぇ……」
別段この任務が俺の勤労意欲を刺激しているわけではない。元々軍人になった目的が「引きこもり平和主義」を達成するための実力と権力を持つための手段であって、人(金髪の孺子は除く)を殺したり、傷つけたりしたいが為に軍人になったわけではない。結果としてそうなるとは分かっていても。
だがいずれにしろ、どのような地位・職場であっても、職責にあっては出来る限りの努力を惜しまないというのが、士官学校以来の自分に課した目標であり義務でもある。天才でも秀才でもない、原作知識を持っているだけの普通の人間である俺ができる、それが唯一の出世できる道だ。
「努力出来るときにしないで後悔するのはちょっと性にあいませんし、早く出世したいですからね」
「ほう……出世か。なるほど」
俺の少し省いた答えに、エジリ大佐は少し溜息混じりで、なるほどなるほどと小さく頷いている。その動きはベコ人形にも似ているが、宇宙歴七八六年のこの世界にはベコ人形は残念ながらない。
「仮に君は出世してそれなりの地位を得たとして、君は一体何を望んでいるのかね?」
「『平和』です。それも期限付きの」
「『平和』、か……ふふっ若いなぁ……羨ましいくらい魂が若い」
エジリの喉奥で押しつぶしたような笑いに、俺はカーソルを叩く手を止めて、椅子ごとエジリに向
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ