暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
プネウマの花
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を描く小道のループはどんどん急角度になっていった。
激しさを増すモンスターの襲撃を退け、高く繁った木立の連なりをくぐると──そこが丘の頂上だった。
「うわあ………!」
シリカは思わず数歩駆け寄り、歓声を上げた。
空中の花畑、そんな形容が相応しい場所だった。
周囲をぐるりと木立に取り囲まれ、ぽっかりと開けた空間一面に美しい花々が咲き誇っている。
「とうとう着いたね」
背後から歩み寄ってきたレンが、煙管を吹かしながら言った。
「ここに……その花が…………?」
「うん。真ん中辺りに岩があって、そのてっぺんに……」
レンの言葉が終わらないうちに、シリカは走り出していた。確かに花畑の中央に白く輝く大きな岩が見える。
息を切らせながら、胸ほどまでもある岩に駆け寄り、おそるおそるその上を覗き込む。
「え………」
しかし、そこには何もなかった。
くぼんだ岩の上には糸のような短い草が生え揃っているだけで、花らしきものはまるで見あたらない。
「ない……ないよ、レンくん!」
シリカはのんびりと追い付いてきたレンを振り返り、叫んだ。
抑えようもなく涙が滲んでくる。
「シリカねーちゃんはせっかちだなー。ほら」
苦笑したレンの視線に促されて、シリカは再び岩の上に視線を落とした。
そこには──
「あ………」
柔らかそうな草の間に、今まさに一本の芽が伸びようとしているところだった。視線を合わせるとフォーカスシステムが働き、若芽はくっきりと鮮やかな姿へと変わる。
二枚の白い葉が貝のように開き、その中央から細く尖った茎がするすると伸びていく。
昔理科の時間に見た早回しのフィルムのように、その芽はたちまち高く、太く成長していき、やがて先端に大きなつぼみを結んだ。
純白に輝くその涙滴型のふくらみは、錯覚ではなく内部から真珠色の光を放っている。
シリカとレンが見守る中、徐々にその先端がほころんで──
しゃらん、と鈴の音を鳴らしてつぼみが開いた。
光の粒が宙を舞った。
七枚の細い花弁が星の光のように伸び、その中央からふわり、ふわりと光がこぼれては宙に溶けていく。
とてもこれに手を触れることなどできないような気がして、シリカはそっとレンを見上げた。
レンは優しい笑顔を浮かべながら頷いた。
だが、その笑顔がどこか自嘲めいたものだったことにシリカは気が付かなかった。
シリカの伸ばした手に残った花の上にウィンドウが音もなく出現した。
そこには、ささやかな重量とそっけない字でこう書いてあった。
《プネウマの花》と。
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