第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Midnight:『Accelerator』
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「全く……『這い寄る混沌』の化身を否定するだけの度量があるかと思えば、トラウマ一つにあの体たらくか」
「その矛盾が、人間の面白いところですよ。人間の貴方には、分からないでしょうが……そう、もう来ないと息巻いていたのにのうのうとまた来る、とか」
「変化を続けるのが生き物ってもんなのさ」
それを、無造作に掴んだ武骨な掌。褐色の白人の、強靭な右手が琥珀色の液体を喉に流し込む。革の上下に、サングラスの偉丈夫が。
何時から、其処に居たか。おかしな事を言う、最初から其処に彼はいた。ただ、認識されていなかったに過ぎぬ。
「流石、愚かにも人間を捨てた男の言う事は違うな、理解不能だ」
「ええ、不様にも人間にしがみつく男の言う事は、予想の内です」
互いに、くつくつと笑いながら。魔人どもが笑い合う、親愛と敵意を籠めて。質量持つ闇と緑の雷光が鬩ぎ合い、室内の空間が軋む程に。
「貰うぜ、あれは。掘り出しもんだ、餓鬼ども以来の。鍛え上げりゃ、一級品になりうる」
「君の『海妖』と『空精』と一緒にしないで頂きたい。あれは、私の『月霊の双子』の総決算なのですから」
「知らねぇな、選ぶのはアイツだろ? 『月の両面』に見詰められるあの餓鬼、或いは、神に届く」
「成る程、慧眼だ。流石は『背徳の都の断罪者』だ。あの旧支配者“悪徳の神”を討ち果たした、雷神だ」
軋む。空間を埋めた闇を、雷が焼き払う。衰えた雷を、闇が染める。故に、空間は軋み続ける。
「まぁ、今は止めとくさ。ちょっとばかし騒ぎ過ぎてな、統括理事会とやらに睨まれちまってよう。黙らせるのに時間が掛かりそうだ」
カロン、とグラスが鳴る。氷、割れて。琥珀色の液体が波打って。注いだ麗しき男、にこりと。飲み干した刃金の男、ニタリと。
「自業自得ですね、全くもって君らしい」
「違いねぇ、年甲斐もなくやり過ぎたぜ」
最後に、その鬩ぎ合いすら消して。三度、差し出されたグラス。そこに波波と湛えられた、氷を抱くブランデー。
それを傾けながら、魔人達の夜は更けていく……。
………………
…………
……
帰途に着いた、その脚が震えていた。まるで、狩猟者に相対した獲物のように。不様にも、無様にも。視線、虚空に漂わせる。目が合えば喧嘩を売ってくる、猿山の猿以下の満ちる道だ。別に五・六人くらい物の数ではないし、今なら十・二十人くらい病院送りにしてやりたいくらいに荒れてはいるが。
万色の紫煙を燻らせ、そんな不甲斐ない自分を恥じて。一般学生の代わりに不良学生が幅を効かせる、昼間とは全く
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