群雄割拠の章
第六話 「ぬわんですってぇ!」
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だが……
あの時の恍惚とした二人の表情は、怖くて直視できなかった。
なまじ二人共顔がいいだけに、めちゃくちゃ気持ち悪かった。
そもそもこの二人、俺がいる時といない時とで言動も表情も違う。
兄の糜竺は、端正な顔にメガネを掛けた、いわゆる冷静沈着なイケメン眼鏡。
俺がいない時は、穏健ではあるがプライドが高く、たまに毒舌を吐くらしい。
だが、仕事は本当に出来る上、女官たちには大層人気が高い。
もっとも、本人はそんな女官たちを忌避しているらしいが。
そして弟の糜芳は、無口な軍人という感じらしい。
俺といる時も兄に比べればおとなしいが、俺が視線を向けると頬を染めるのは正直やめて欲しい。
兄に比べると童顔で、勝ち気な顔立ちをしているが、言動は寡黙な方で必要なことを短く喋るタイプ。
武器は無手を得意としているそうで、一度手合わせしたら拳法に近い動きだった。
けど、手合わせをしている間、ずっとニヤけ顔だったのは俺を挑発するためだと思いたい。
頬を染め、恍惚になりながら拳を放ってくる相手など、俺は見たこともなかったから。
こんな二人がなんで俺を慕ってくれるのか、本当に意味がわからない。
二人によれば、俺は男としての希望の星なのだそうだ。
どういう意味か怖くてそれ以上聞けなかったのだが、言葉通りの意味じゃないことは確かだろう。
二人が背後にいると、視線が臀部に集中している気がしてならないからだ。
ホント、それだけはかんべんして欲しい。
それにしても、二人が話す俺の……というか、天の御遣いという逸話は、常軌を逸している。
あの三國無双と言われた呂布と互角に戦い、梁州という州を作り上げ、そこを大陸一というほどに発展させたのだという。
『それ、どんな神様のこと?』と本気で言いたくなった。
一番わからないのは、それが俺自身だということ。
残念ながら、俺自身には全く身に覚えがない。
記憶を失っているのだから、身に覚えがないのは当然なんだが……俺なんかがそれを出来たということが不思議でしょうがない。
一体、記憶を失う前の俺は、どれほどすごい人物だったのだろうか……
しかし、そう言われてみると不思議なことがいくつかある。
梁州というのは漢中を中心とした場所。
にも拘らず、大陸の反対側とも言える平原周辺にいたのは何故だろうか?
そして梁州で俺は、劉備玄徳の下にいたとのこと。
あの蜀王劉備である。
とすれば、何故三ヶ月以上もこうして放置されているのだろう?
白蓮に聞いてみたのだが――
「うーん……まあ、今はいいんじゃないか? 特に桃香からは何の便りもないし」
とのことだった。
つまり俺は、それほど重用されていなか
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