第147話
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の事件の容疑者なのか、それとも保護対象なのかも判断がつかない。
迷子になっている打ち止めも気になるが、やはり優先順位は『迷子』より『事件』だ。
それに麻生も捜索に協力してくれている。
もしかしたら見つけて、これから自分のマンションに戻っている可能性もある。
連絡も来る筈だから、ともかく目の前の事件に集中する。
無線機のスイッチを押して、それから言った。
「こちら黄泉川から本部へ。
コール334についての詳細を求める。」
連絡ミスかな、と思って確認を取ろうとしたのだが、返事はない。
サーッ、という低いノイズだけが彼女の耳に届く。
その後も何度か無線機に向かって話しかけたが、応答が返ってくる事はなかった。
「・・・・・」
愛穂は無線機のスイッチを切る。
路側帯に停めた車の中で、愛穂は葉書サイズの紙切れに視線を注ぐ。
そこには、雨の中で倒れている警備員達と、その真ん中に突っ立ている黄色い服の女が写っている。
(この女・・・)
もう片方の手の指で、写真の中の女を弾く。
(一体これは何なんだ。
見た感じじゃ、保護対象ってツラじゃないじゃんよ。
まるで、ウチの同僚を叩き潰した後みたいな・・・)
不気味な感触が、愛穂の背筋を駆け抜ける。
それと同時に、自分の同僚が地面に伏している事に怒りを覚え、
(ま、ツラを見かけたら丁重にお話を伺うとしますか」
適当に考えたが、愛穂が再びスポーツカーを走らせる事はなかった。
ゾン!!、と。
黄泉川愛穂の脳に、唐突に衝撃が走ったからだ。
「あ・・・・ッ!?」
悲鳴すら上げられなかった。
そのまま全身から力が抜け、彼女の上半身がハンドルにのしかかった。
胸が圧迫されて苦しかったが、どうする事もできない。
身体の芯から指先まで、全ての力が奪われている。
急速に視界が狭まっていく。
(な、にが・・・・)
訳の分からないまま、愛穂の意識が落ちていく。
ほんの数十センチの所に車内無線のスイッチがあった。
しかし、助けを求められない。
呼吸すらもままならなくなってきた。
(・・・・この、写真)
気をつけろ、という同僚からのサインだったかもしれない。
もしかしたら、自分と同じ状況に陥った警備員が、最後の力を振り絞って送信してきた可能性もある。
だが、それが生かされる事はなかった。
愛穂は落ちていく意識の中、前を見る。
すぐそこには麻生のお守りが置いてある。
愛穂は動かない腕を必死に動かし、そのお守りを掴もうとする。
しかし、その手が届く事はない。
腕に力が入らなくなり、だらりと腕が完全に下がる。
(・・・くそ・・・・きょう
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