第二十四話 麗しき和服その十
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「あたしには縁ないな」
「高いからっていうの?」
「ああ、そうだよ」
裕香にその通りだと返す。
「だからな」
「絹の下着には縁がないのね、薊ちゃんは」
「そうだよ、それにさ」
「それに?」
「下着って木綿が一番じゃね?」
下着の生地についての意見だった。
「やっぱり」
「木綿ね」
「コットンな、やっぱり直接肌に着けるものだし」
「木綿が一番っていうのね」
「あれがさ」
こう言うのだった。
「肌触りもよくて汗も吸ってくれるし洗いやすくて」
「しかも安いし」
「あたし下着も赤だけれど」
ブラもショーツもだ、力の持ち主は八人共それぞれ好きな色があり下着もその好きな色で統一しているのだ。
「木綿だと赤多いしな」
「だからなの」
「そう、木綿が一番だよ」
「そうなのね」
「裕香ちゃんは下着の色のこだわりないよな」
「特にね」
裕香はそうだった。
「黒とか紫の大人っぽいのは抵抗があるけれど」
「紫もいいわよ」
その紫の下着を愛好している菫の言葉だ。
「その色もね」
「紫もなの」
「大人の雰囲気な苦手なら」
それならと話す菫だった。
「薄い色でもいいじゃない」
「ライトパープルね」
「そう、そうした色の下着もあるわよ」
「下着の色って多いからね」
ブラやショーツになるとだ、それもまたファッションだからである。
「だから紫って言っても」
「明るい色もあるのね」
「そうした色はどうかしら」
「そうね、ちょっと考えてみるわ」
「そうしてね」
「桜ちゃん下着は」
「そちらでシルクは持っていないです」
桜は薊の問いに静かな微笑みで答えた。尚智和は下着の話がはじまると最初の段階で少女達に挨拶をして席を立った。男がそうした話題を聞くことはよくないと言って。
「下着の色はピンク、それも木綿の感触は私も好きなので」
「そういえばそうだよな」
薊も言われて桜の下着のことに気付いた。
「桜ちゃん木綿の下着しか持ってないな」
「実は着物以外の服の生地は木綿が多いです」
「木綿なあ、いいよな」
「はい、とても」
「そこは桜ちゃんも同じか」
大店の娘でも、というのだ。それも跡取り娘である。
「そこは」
「そうかと」
「まあ下着の色はさ」
「ピンクと決めています」
「その色だけか」
「そうしています」
「それじゃあさ」
その話を聞いてだ、薊は桜にあらためて言った。
「今度の日曜百貨店行かね?」
「八条百貨店ですね」
「日曜下着のバーゲンあるんだよ」
それでというのだ。
「だからさ」
「一緒にですね」
「行かないか?」
こう言ってだ、桜を誘うのだった。
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