第二十四話 麗しき和服その八
[8]前話 [2]次話
「まずは着ることです」
「呉服もか」
「そうです」
桜はにこりと笑って薊に話した。
「まずはです」
「けれどな、呉服なんてな」
呉服がどういうものか知っているうえでだ、薊は桜にこう答えた。
「滅茶苦茶高いからな」
「一度着るだけでもですね」
「あんなの試着とかもな」
とても、というのだ。
「絹織物から作るんだよな」
「本格的には」
「そんなのな」
それこそ、という口調での言葉だった。
「そうそう着られないよ」
「ですからその際は」
「その時は?」
「試着用の服も用意していますので」
「そうした呉服もか」
「うちにはあります」
桜は温厚な笑顔のまま薊に話す。
「ですからいらした時はどうぞ」
「いや、呉服なんてものは」
とてもだ、高過ぎてというのだ。
「そうそうな」
「買えないですか」
「だって一着でそれこそな」
薊はここで考える顔になった、呉服の価格を言おうとしてだ。だがその額を思い浮かばず困った顔でこう言ったのだった。
「ええと、どれだけになるだろうな」
「高いもので数百万になるわ」
その薊にだ、菖蒲が超えた。
「それだけになるわ」
「数百万かよ、おい」
「ええ、より高いものもあるわよ」
「一千万とかかよ」
「あるわ」
そうだというのだ。
「それだけのものもね」
「何でそんな値段になるのだよ」
「まず絹がありまして」
桜がその事情を話す。
「そこから織物にします」
「絹織物か」
「西陣織等は特に」
京都のそれだ、織物職人は京都においてその名を知られた職人達の一つだった。
「高価になります」
「職人さんの手も入るのかよ」
「そしてそこから服を作りますので」
「高価な絹に織物職人さんの手を加えて」
「服を作りますので」
「だからか」
「高価になればかなり高価になります」
桜もこう言うのだった。
「それこそ高くなれば」
「一千万位にもか」
「はい、なります」
そうだというのだ。
「それが呉服です」
「一千万とかな」
「とてもですか」
「そんなの誰が買うんだよ」
こうまで言う薊だった。
「服の値段じゃねえだろ、もう」
「薊ちゃん服は」
「バーゲンとかだよ」
あっさりと向日葵に答える。
「そんな家が一軒建ちそうな服なんて有り得ねえよ」
「薊ちゃんにとっては」
「ああ、服は結構孤児院の余りを貰って持ってるけれどな」
それでもだというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ