絆固めて想いを胸に
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上げた。
「季衣が私を守ってくれるなら、あいつの手足を磔にする事も容易い」
前々からの戦場とは違う雰囲気の秋蘭に、凪と沙和はゴクリと生唾を呑んだ。
春蘭に隠れがちだが、秋蘭も一介の武人である。それも笑みの理由の一つ。
突撃思考の強い姉を支える為にと自然に選んだ武器が弓、そして後方支援の部隊……そう思うモノがほとんどであろう。
半分は正解で、半分は間違い。
何が華琳の為に必要かを研鑽し続ける彼女は、天より与えられた自分の弓の才と頭脳を正しく理解し、何より感謝していた。
秋蘭の仕事は姉を助ける事……では無い。華琳の為に戦う事だ。
気付いてるモノは少ない。曹操軍の者達で秋蘭の本質に気付いているのは、華琳と雛里だけ。
――これほど……これほど楽しみな戦場が何処にあろうか。私が華琳様の為にあいつを捧げられる。姉者は霞を捧げた。だから次は、私が捧げてみせる。
彼女は負けず嫌いでありながら、誰にも零さず内に溜め込むタイプである。さらには、春蘭と同じく華琳を絶対と置く狂信者でもあるのだ。
裏切りなど有り得ない忠臣にして、華琳の為ならば命すら惜しまない。主の為になる事を分析した上で判断できる明晰な頭脳を持っているが故に、春蘭よりも秋蘭の方が恐ろしい。
自分でもそれが狂気の類だと理解している秋蘭は、静かに、蒼い炎のような闘志を心の内にいつでも燃やしている。
姉妹という絆は支えるだけでは収まらない時も多々ある。
どちらの方が成績が良いかで競い合うように。
劣等感や嫉妬では無い。そんな安っぽいモノでは無いのだ。相手に対して許せない心では無く、力が足りない自分に対して憤りを感じるという、華琳好みの在り方。
片方が大きな手柄を立てたのに、片方は表立っては手柄を立てていない。そんな事が許されようか。
徐州の戦の最中に留守を守り切った……その程度で秋蘭の渇きは満たされない。
彼女は渇望している。主の為に、愛しい姉と同じモノを捧げるのだ、と。実力主義の曹操軍に於いて、そして華琳の部下であるならば、並び立つには結果を示してこそ……そう、心をずっと燻らせていた。
今回の戦、季衣が秋蘭に着いた事には理由があった。
本来なら、季衣は官渡で留めて置く算段であったのだが、部隊を引き連れずに季衣単体だけ、秋蘭の護衛として連れてきている。
敵の本質を見抜いている秋蘭が軍師達に進言したのだ。確実に張コウを捕える為に、である。
野性味の強い季衣は勘が鋭い。流琉も森などで獣を獲ったりしていたが、季衣はそれよりも上だった。
精神力と集中力を要する弓術。それを主体に戦う秋蘭を、手段を選ばない部隊から“確実に守る”には護衛が必須。
ましてや陣から離れての野戦を行うのだから、一度に複数本の矢を放てる秋蘭であろう
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