絆固めて想いを胸に
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んな彼女の想いを読み取り、外部勢力から差された一手から安全性を考慮し、詠に出るかどうか自分で決めて出て来たらいいと示している。ならばもうやる事は一つ。
そっと詠の両手を取って、月はきゅっと包み込む。彼女の柔らかな微笑みは、いつでも詠を癒す何よりの光。
「詠ちゃんはやっぱり凄いなぁ」
「バカ達の想いはボクと月の胸にも残ってるでしょ? 想いを繋ぐのは皆で一緒に、ね?」
「うんっ」
二人の少女がクスクスと笑い合う。秋斗は霞に頷いた後で背を向けて天幕の入り口に向かい、
「じゃ、官渡で待ってるから」
「あ……霞さん、詠ちゃん、私も待ってますから」
背を向けたままでひらひらと手を振った。月が急いでそれに続く。
名残惜しそうに何度も振り返る月であったが、遠くで二人に苦笑しながら手を振りかえされ、恥ずかしげに前を向く。
何も話さずに幾分、簡易で設置された陣の外、月光の前に来る。お願い……と声を掛けてから、膝を降ろした月光に跨り、秋斗もそれに続いた。
走り出した月光の速度は兵達の乗る馬とは一線を画す。流れる風が耳を騒がせる中で、月は彼の腕の中で彼に語りかけた。
「あなたも戦いたいですか?」
聞くべきでは無いと分かっていても、聞かずにはいられない。
官渡を出立していく将達、兵達を見送る彼の目が、哀しげに揺れていたのを知っているから。二人にその目を向けない為に、天幕を出る時も振り向かずにいたと、分かっていたから。
「……誰が帰ってくるか分からんってのはさ、こんなに怖いもんなんだな」
質問に対して真っ直ぐ答えない彼は、黒麒麟と全く同じだった。
その言葉は、詠を送り出したから発されたモノ……では無い。組まれている計画から、将達や軍師達に向けてでは無かった。
黒麒麟と同じように、秋斗は兵達にも想いを向けていた。人が死ぬ、それが嫌で仕方ない。わがままだと、叶わぬ願いだと分かっていても、一人でも多くに生きて欲しい。
――始まりは皆一緒。“彼女”も、桃香さんも、私も……だから今の彼も“彼女”や私と同じになっていく。でもそれって……
そうか、と月は気付いた。ふるふると身体が震えた。気付いてしまった事実に、涙が落ちそうになった。
記憶の戻し方は手探りだ。同じ事をしていけばその可能性が上がるのではないかと、彼と月は追い掛けてきた。
しかし……ここに来てその大前提が狂っている事にやっと気付いた。
――始めの一歩が違いすぎる。この人はこうして傷つく事に慣れて行くから、瘡蓋を自分で捲りながら進んで来た彼とは、まったく違う。
心の予防線を張らせて、華琳や月のような王の強さを身に着けさせればいい。駒を動かすように戦を見せて、軍師のように兵の生き死にを頭に植え付け、より強固に心の強さを
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