暁 〜小説投稿サイト〜
東方紅魔語り
第一章 紅魔館
Part1 廃墟
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目の前には、古びた廃墟のような家が木々に囲まれてポツリと建っていた。
あまりにも怪しい。正直な話、今すぐにでも逃げ帰りたい気分だ。
だが、ここで逃げ帰ってしまうと、友人から何を言われるかたまったもんじゃない。

「ああクソ、こんな事なら『度胸試し』なんてクソ企画に参加しなけりゃよかった」

友人が暇で企画した『度胸試し』。それは、各地にある廃墟へ一人ずつ向かい、中にある何らかの物品を持ち出して帰ってくる。というものだ。
来る前は楽勝と踏んでいたのだが、実際に来てみると、不気味な雰囲気が辺りに漂っている。

「あー、今すぐ家に帰って『東方紅魔郷』をプレイしてェ」

東方紅魔郷とは、パソコンの弾幕STGだ。今は、そのゲームのキャラクター、『フランドール・スカーレット』と戦いたくてウズウズしている。
戦いたいとは、別にフランドールの事が嫌いだとかそういうものではない。むしろ逆で、フランドールの為なら今すぐにでも二次元の世界へ飛び込みたい、そんな感じだ。
息を吐いて、目の前の廃墟へ改めて視線を向けてみた。
やはり不気味な雰囲気で佇んでいる。

「・・・よし、覚悟を決めるか」

そもそも、中にあるものなら玄関辺りに置いてある物でもいい訳だ。無理に入る必要はない。
とりあえず、扉のドアノブに手をかけて深呼吸をする。
開けた瞬間に近くの何かを取り、速攻で扉を閉める。この一連の動作を脳内で繰り返し再生していく。
そして。

「アアアァァァ!!」

気合を入れてドアノブを回し、手前に引いた。周りから見れば相当な変人だが、そんな事は気にしない。
扉が音を立てて、勢いよく開かれた。そして、玄関の中へ素早く手を伸ばす。
だが、その家の中を見て、脳内が絶望に包まれた。

「なん・・・だと?」

玄関には、物など一つたりとも落ちていなかった。そう、一つたりとも。
これでは先程まで考えていた姑息な手段は使えないーー!

「く・・・クソ・・・ど、どうする!どうすれば!」

自分がパニックになっていることは把握できている、だが、落ち着く事は出来ない。
素数を数えてみるが、よく考えてみれば、俺は素数を知らなかった。
因みに、俺は高2である。

「か、覚悟を決めるしかないのか・・・!?」

玄関の先に続く廊下を見て、絶望感に苛まれる。
廊下の奥は暗闇に包まれていて、全く先が見えない。
と、唐突にポケットの中に入れていた携帯が振動した。
心臓と連動して体が飛び跳ねる。
だが、その振動の正体が分かった瞬間、携帯を乱暴に掴んで耳元に付けた。
携帯の向こうからは、こんな企画を開催した主犯の友人の声か聞こえてきた。

『おーい、こっちは終わったぞ、早く帰ってこーい』

それは、もう終わらせた。という報告だ
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