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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
41.神意の悪意
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蹴散らしていく。

「まだこんなもんじゃねぇよな、緒河ァ?」

 舌なめずりをしながら立上が不敵な笑みを浮かべる。それは恐怖さえも感じるほどだった。しかし今はそんな感情など切り捨ててでも、彼を止めなければいけない。
 立上が指を鳴らした。乾いた音が大気を震わせ、彩斗の耳まで届いた。それと同時に彼の後方にいた蛇の母体が叫んだ。すると蛇の母体の後方から異次元を割ってくるように何万という蛇の大群が彩斗へと襲いかかる。
 “真実を語る梟(アテーネ・オウル)”だけでは確実に食い止められるような量ではない。それならやることは一つだ。

「──来い、四番目の眷獣、“海王の聖馬(ポセイドン・ユニコール)”!」

 右腕から噴き出された鮮血が魔力の塊となる前に彩斗の身体へと魔力が凝縮されていく。
 目視することができない闇夜の海のような漆黒のロングコートを纏う。
 彩斗が右手を飛来してくる蛇の大群へと向ける。大気中の存在する水分が拡散する。島の周囲を包んでいる海水が巻き上げられ、蛇たちの行く手を阻むように障壁へと変貌するのではなく巻き上げられた海水は大気に飲まれ、消失する。それはまるで蒸発でもしたようにわずかな蒸気に似たものを残してだ。
 そして再び、彩斗は鮮血を噴き出させる。

「──来い、十一番目の眷獣、“剛硬なる闘牛(ヘパイストス・バイソン)”!」

 魔力の塊が大気を引き裂き、彩斗の手の中へと凝縮されていく。
 紅蓮を纏いし、錬金術の最終到達点を模した鮮血の石へと姿を変えた。
 掌に収まるほどの石から爆炎が空気中へと流線を描き、大群の蛇へと襲いかかる。
 この程度の炎では、何万という蛇の大群を蹴散らすことなどできない。

「……失せな」

 爆炎が蛇の大群へと接触した瞬間、とてつもない轟音が響きわたる。暗闇が覆っていた夜空が一瞬にして爆炎へと包み込まれる。爆炎は全ての蛇を飲み込んで消滅していく。

「なにをした?」

 忌々しげに立上がこちらを睨みつける。彩斗は不敵な笑みを浮かべて先ほど起きた現象のことを説明する。

「なに簡単なことだ。水素と酸素が火に反応して爆発しただけだ」

 そうただ簡単な原理だ。“海王の聖馬(ポセイドン・ユニコール)”が空気中と海水を可燃性の気体である水素と支燃性である酸素に分解し、“剛硬なる闘牛(ヘパイストス・バイソン)”の爆炎が着火しただけだ。水素爆鳴気と呼ばれる現象──水素二体積と酸素一体積を混合した気体。点火により爆発的に燃焼し,多量の熱量を生じ強い破壊力を発する。
 その破壊力が蛇の大群を焼き払った。
 結局いかなる強大な魔力を持っていても、最強の眷獣を持っていても、魔族を倒せる武術を使えようとも、自然の力には逆らえないものだ。

「今度は俺の番だ」

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