第一章 小問集合(order a la carte)
第六話 命の分水嶺
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ことですか?千早さん。」
「ほら、あそこに見えませんか?」
犠牲者をこれ以上増やさないように、明久の支援に回ることだ。
(代表殿からヘルプがあれば吉井に無理矢理食べさせましたが。恨みに思わないでくださいよ、代表……)
たぶんヘルプがなかったのは、女の手など借りない、みたいな発想から何だろうけど、まさか参謀の話を引き受けた次の日には代表を殺ることに協力していることになるとは。
「あぁ、あれはですね明久君。たぶんヒヨドリだと思いますよ。もしかしたら違っているかもしれませんけれど、ね。」
「へぇ、やっぱり姫路さんは物知りなんだね。」
「そんなことないですよ、ってあれ?お弁当が無くなってしまってます……」
「え?それはね、雄二がおいしいおいしいってそれはもうすごい勢いで食べちゃってさ。」
わずかに坂本が体を震わせてそれに応じる。
姫路さんには美味しかったと、それ以外の人間には二度と食いたくないとの主張の為に。
姫路さんの明久に発するほめてほめてムードから少し離れたところへ坂本を引きずっていく。
「代表、戻ってきてください。」
「参謀、俺の代わりにFクラスを……」
「大丈夫じゃなさそうですね……失礼致します。」
のどを刺激して(チョキで突き)、無理矢理口の中の物を吐き出させる。
「うぅ、ここは……、天国か地獄か……」
……やばい、本気で生命の危機だったんだ。
何とか坂本は生者と死者の間を分かつという有名な川を渡らずに済みそうだ。
「そうそう、姫路さん。さっき雄二がクレープを奢ってくれるって……」
「言ってねぇ!」
「明久よ、嘘はだめじゃぞ。」
僕は未だ死に体のムッツリーニ君を介抱しながら、彼らのバカ騒ぎに耳をそばだてていた。
さっきまでの戦々恐々とした空気は無く、ただの学生のお昼の一番面としては妥当なムードに落ち着きつつあった。
少なくとも今日は臨死体験を誰もしな……
「そうです、デザートも用意してたんです!!」
そういって笑顔の彼女が取り出したのはタッパーに入った杏仁豆腐。
タッパーが取り出された時、屋上を季節はずれの大寒波が襲った。
僕は今まで知らなかった、怒気や殺気といった物がこれっぽっちも無い朗らかな笑みがひどく末恐ろしいものだと感じることもあるとは。
誰も何も反応しないのを心の底から不思議そうにしていた姫路さんはまた何かに考えついたらしい。
「そうですよね、スプーンがないと食べにくいですよね。」
天然なのですね……
重箱を入れていた袋をごそごそと探していたが、どうもスプーンが見つからないらしい。
(地獄への猶予期間が延びた)
「ごめんなさい、今教室に取ってきますね」
そういって屋上から姫路さんが消えると、男同士の戦争が発生した。
「雄二!」
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