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その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方1
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さぁ、ゆっくり休んで。早く良くなってね」
(ゆっくり休んでいる時間は、ないんだけど、ね……)
 意識が遠のく。おそらくは薬のせいなのだろう。抗う事はできそうになかった。
 次に意識が戻ったのは、おそらく真夜中頃だった。その頃には、大分魔力も回復していた。取りあえず不自然にならない程度に傷を塞ぐ。失った血までは戻って来ないため、それくらいが限界だったが――それでもかなり楽になった。明日の朝には何とか動けるようになるだろう。
(あの子には悪いけど、長居はできないからね)
 身体が動くようになれば、隙を見て抜けだすつもりだった。アタシにはまだやるべき事が残っている。そのためにもまずは身体から力を抜き、回復に努める。と、
「誰だい?」
 闇の中で、誰かが近づいてくる。感じる魔力こそ微妙に違うが、多分自分と同類。つまり、誰かの使い魔だ。だが、それなら主は誰だ?――警戒と共に問いかける。
『それはこちらのセリフ。我が領域で何をしている?』
 男と女の声が重なり合った独特の声。光の妹が持っていた本とよく似ているが――こちらは女性の声の方がよりはっきりとしている。しかし、
(我が領域……? ここって光の縄張りじゃなかったっけ?)
 はったりだったのかもしれないが――光は確かにそう言ったはず。困惑していると、その誰かが近づいてくる。猫だった。赤い目をした黒猫。
『御神光。その名前に聞き覚えは?』
「アンタ、光の知り合いなのかい?!」
 慌てて柵に跳びかかる。身体は痛んだが、関係ない。
「答えろ! アンタは御神光を知っているのか?!」
『知っていると言ったら?』
 かなりたじろぎながら、それでもその猫は落ち着き払った様子を演じて言った。
「伝えてくれ。フェイトを助けてって! 早く、早く助けてあげて!」
 あの女は何かヤバいものになりつつある。フェイトの命だって危うい。今までだって危なかったのに。
『……その子は今どこに?』
「プレシア・テスタロッサ! そう言えばアイツには分かる! 何なら、管理局にアタシを引き渡してくれてもいい。アイツらの協力が得られれば、あの場所に辿り着ける!」
『分かった。伝えておく。だから、今はゆっくり休みなさい』
 言って、猫は闇の奥へと消えていった。
「頼むよ。お願いだよ……」
 あの猫が信じられるのか。今さらになって不安を覚える。でも、もう縋れるものがない。何としても光に伝えなければならない。
(誰でもいいから。フェイトを助けて……)
 そして、アタシは再び意識を失った。




「プレシア・テスタロッサ。聞き覚えは?」
 光がくれた使い魔から接続を断って。代償に捧げた血が霧散していくのを横目に見ながら、私は恭也に問いかけた。
「残念ながらないな」
 恭也はため息と共に首を横に振
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