魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方1
[9/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
う少し発見が遅れていれば危なかったでしょう」
アリサ家の犬達のかかりつけの動物病院で、治療を終えたばかりの獣医が言った。
「火傷は、おそらく通電……電気によるものです。落雷が原因とは思えませんから、おそらくは……」
「虐待、ということですな?」
「残念ながら。それもかなり酷いものです。警察ではないので、具体的な方法までは分かりませんが、傷の形からして……そうですね、電気の流れる導線で身体をぐるぐる巻きにしたのではないでしょうか。他の傷、刺し傷も……そうですね。カッターナイフにしては大きすぎます。おそらく包丁か何かでしょう」
酷い傷なのは分かっていた。けれど、そこまで酷い事をされていたとは思ってもいなかった。重苦しい、嫌な空気が流れた。
「ただ、不幸中の幸いとでも言いますか……おそらく、飼い主の仕業ではないでしょう」
「そうなんですか?」
「ええ。毛並みもいいですし、栄養状態も悪くありません。何より、今回の傷の他に目立った傷はありません。普段はちゃんと世話をされていたと思われます。まぁ、身元を証明する首輪などがないので断言ができませんが」
それは、少しだけ安心できる。あの子がどういう存在かは分からないが――ちゃんと大切にされているらしい。
「どうやら貴方に懐いているようですし、このまま引き取って行かれますか?」
彼女の家なら連れて帰っても平気だろう。獣医はそう判断したらしい。それに、あの子は、意識がないままずっとアリサへと手を伸ばしていた。多分、この子の飼い主とアリサはどこかが似ているはずだ。
「ええ。そうするわ」
一瞬の迷いも無く、アリサが即答した。
「明日、お見舞いに来るね」
その子を引き取り、アリアの家に着いたのは、すっかり夜になってからだった。
「ええ。それじゃ、また明日ね」
もう時間が時間なので、私はそのまま家へと送ってもらう事になった。あの子は気になるけれど――姉にも連絡しなければならない。
(きっと何かが起こっている)
だから、あの子達を助けてあげないと。
5
(ここ、は……?)
不自然な眠気と痺れの中で目が覚めた。動かない身体に鞭打って、何とか周囲を見回す。身体は相変わらず痛む――が、魔力の回復が始まっていた。ついでに、身体に包帯が巻かれているのが見える。誰かが治療してくれたのだろう。
「気がついた? 良かったぁ」
誰かの声。そちらに視線を動かすと、金髪の少女がいた。フェイトではない。見知らぬ少女だった。
「もう大丈夫よ。頑張ったわね」
彼女が触れてくる。その匂いには覚えがあった。というより、思い出した。
(アタシもやきが回ったかね)
意識を失う前に呼び掛けてくれた少女だった。まったく、いくら髪の色が似ているとはいえ、主と間違えるとは使い魔失格だ。
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ