魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方1
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る)
あれだけの炎に包まれながら、着衣には一切の損傷がないので断言できないが――受傷範囲は全身に及んでいると考えられる。通常、皮膚の四〇%が失われた時点で、生命に深刻な危険が迫るとされている。御神光が負ったのは、この時点で充分に致命傷だった。
(そのうえであの次元跳躍攻撃。確かに直撃ではなかったかもしれないけれど……)
鮮明さに欠けた静止画を拡大する。はっきりとは分からないが――それでも、決して浅くない傷を追っているのは明白だった。それだけで重傷と呼んでいいはずだ。さらに、
(彼がどの時点で飛翔魔法を維持できなくなっていたかは分からないけれど……)
水面に叩き付けられる遥か前の段階で、背中から翼が失われていた。どの時点で自由落下に切り替わっていたかは特定できないものの、落下距離を最低限に見積もったとして、あの速度で水面と接触した場合、コンクリートに叩き付けられた時と同じ程度の衝撃に襲われているはずだ。人体にとってそれは致命的なダメージと言わざるを得ない。以上の事から、御神光はすでに死亡していると考えられる。……考えられるのだが、
「何でジュエルシードの反応がないのかしら……」
御神光が沈んだ場所を中心に、捜査範囲を広げても海中にジュエルシードの反応は見られない。周囲の海流を考慮していくら予測演算させても、周囲の湾岸に流れ着いたり、捜索範囲の外にまで出るという結果は出てこない。もっとも、あくまでアースラは巡航艦であって調査艦ではない。海流調査用の専門器材など搭載されていない。前提となる海流のデータが誤っている可能性も否定はできないが――
(誰かが持ち去った可能性を疑うべきでしょうね)
エイミィ達もそれを考慮して演算を繰り返している。ならば、根底から大きく外れているとも考えづらい。となると、
(問題は一体誰が持ち去ったか、かしら)
目下、最も疑わしいのは次元魔法を撃ち込んできた魔導師だろう。とはいえ、私達に気付かれずに回収できるかと言われれば、やはり疑問が残る。しかし、他に誰が――
「艦長。御神光の死亡は確定事項ですか?」
息子――クロノが言った。
「いいえ。遺体が発見された訳ではないから、確定とは言い難いわね」
私自身の願望が混じっていたかもしれない。言葉にしてからそう思う。あの状況で生きているとは考えづらい。そんな事は分かっているつもりだったが。
「それなら、未回収の五つは御神光が持ち去ったのではないでしょうか?」
「彼が生存しているなら、そうでしょうね。でも、あの状況で生存できるとは……」
現実的に三つもの致命傷を負ったのが明確である以上、とても生きているとは思えない。それは、実際に現場にいたクロノの方が分かっているはずだが。
「確かに。ですが、あの男が自滅を前提に行動するとは思えません。あの魔法を使
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