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東京百物語
ゆり
三本目
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残念」



 青山はちっとも残念そうだとは思っていない顔で、「行こう」と山下を促す。



 駅が近づくにつれ、喧騒が戻ってくる。夜の十時なんて、東京の夜にしては早いほうだ。酔いが回ったサラリーマンが次の店を探して歩く。そんな道行く男を引き留めては、何かを話しかけるスーツ姿の男もいる。街のあちこちに廃れた活気がある。



 だが、暗闇から客の袖を引くのが、人間だけとは限らない。



 ジジ、と音を立てる電灯の光が二人の影に細く割り込む。まるで長い腕を伸ばすように。



 東京の夜は、まだ始まったばかりだ。
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