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東京百物語
ゆり
三本目
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まえがいるせいだ、って言われたら誰だって嫌だろう?霊も同じだよ。見えなくても霊はいる。本当の霊障もある。怖がるなとは言わない。でも、何でもかんでも霊のせいにはして欲しくないんだ。彼らとは互いに、恐がり憎しみあう関係じゃなくて、助け合う関係であれたらいいな、と僕は思う」



「・・・ごめんなさい」



 ゆりは心から反省した。確かに、ゆりは全て霊のせいと決めつけ、必要以上に怖がっていたふしがある。



「別に怒っているわけじゃ無いよ。無事で、本当に良かった」



 青山が優しく微笑み、ゆりはまた頬を濡らした。



「ありがとう・・・」



 ゆりは泣きながらふと思った。



 あれ、でも、強い視線は部外者が侵入出来ない大学の教室の中でもしたような?



















「彼女は直感力が強いんだね。ものを感じる力。霊感というかシックスセンス、の一種かな」



「え?霊感?」



 警察の事情聴取から開放され、ゆりとも別れ、青山と山下が二人で駅に向かっていた最中(さなか)に、ふいにぽつりと青山が言った。



「・・・青山さん?あれ、ゆりちゃんに起こったあれやこれやそれやはぜーんぶただの人間、ストーカーのせい、ってことで話がついたんでしたよね?」



 嫌な予感に山下が問うと、青山はにこっと笑って首を振った。



「後半はストーカーとごっちゃになってたみたいだけど、最初は違うはずだよ。その証拠に、最初の視線は、大学にいる時にしか感じていなかったと言っていたし」



「えーっ!じゃあやっぱりゆりちゃんにお化けが憑いてるってこと!?大変!除霊して貰わないと!」



「日紅、落ち着いて。憑いているのは彼女にじゃないよ。だから彼女を除霊なんてしても意味が無いんだ。彼女は強い視線を感じていたと言っていた。他の誰かを見ている視線に、偶然彼女が気づいてしまったのは不運だったね。思い悩む性格のようだし、一度気になると全部が気になってしまって、自分が見られているわけでもないのに、自分で自分を追い込んでいく悪循環だった。でも、もう大丈夫。あのハンカチを渡したから、もう視線は気にならないはずだよ」



「そっか・・・良かった。で、その本当に霊に取り憑かれた人は大丈夫なの?」



「う・・・ん。多分・・・」



「なにその曖昧な返事!」



「いや、正確には憑いているのは霊じゃないからさ。なんていうのかな・・・神とか、悪魔・・・妖怪?魔?人間にとって悪い方のものであるのは間違いないんだけど、何か様子がおかしくて・・・その人に危害を加える気は無いようなんだ。
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