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無欠の刃
下忍編
犬猿の仲
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 その言葉に、沈黙が落ちる。黙りこみ、何も言わずカトナへと視線を返したいのは、カトナの不自然なまでに穏やかな瞳を見つめる。
 凪いだ海のように、カトナの瞳にはなんの感情も浮かんでいない。故に、これは勝手な思い込みではなく、ただの事実でしかないのだと、唐突にいのは気がついた。

 「サスケはずっとその子を好きで居続ける。絶対に振り返らない、ほかのこには見向きもしない、サスケはその子にしか恋をしない…その子以外に振り返らない」

 それもまた、純然たる事実だった。
 カトナはナルトを通してしか人を信頼出来ない。故に、これはサスケを信頼しているのではなく、それを事実として認識してるからでしかなかった。
 だからこそ、その言葉にはなんの誤魔化しも嘘も偽りもない。思い込みもなく、誤りも過ちもない。
 サスケは絶対に振り返らない。その、少女以外には。
 どんなにひどいことをしても、サスケはあその少女を見つめ続け、どんなにやさしくしても、サスケは振り向こうとしない。

「それでも、好き、なの?」
「当然でしょ」
「そっか」

 いのは即答し、カトナを睨み付けた。本当のところ、その言葉を聞いて、胸に来るものがないわけでもなかったけれど、しかし、知ってはいた。
 サスケが誰かを好いていることくらい、とっくの昔に。好きな人の恋くらい察してこその少女というものだろう。サクラもまた気がついているだろう…彼女の場合はそこから目を反らし、見ていないふりをしているが。
 いのはちゃんとわかっていた。サスケはきっとこっちをみない。でも、それでも、好きなものは好きなのだから仕方ないだろう。ミーハー気分だったとしても、それでも今、心のそこから好きなのだから、仕方ないのだ。
 その言葉を聞いて、カトナは何も言わず、目を伏せた。それがいのの勘を逆撫でする。
 まるで哀れむように、そっと、目を伏せるのだ。いのは別に辛くともなんともないのに、確かに報われない恋をしているが、他人にとやかく言われるほど、傷ついてはいないのに。
 いつだってこうやって、いのがサスケを好きだという度に、まるで哀れむように、カトナは目を伏せる。
 好きな人に振り向かれないいのを…いや、いののように振り向かれない誰かを思いだし、悼むように、カトナは目を伏せる。
 だから、いのはカトナが嫌いで仕方がない。世界中の誰よりもきっと、いのはカトナのことが大嫌いで。
 それと同じくらいには、カトナのことを気にかけていた。
 …非常に癪なことなのだが、どうにも、いのはカトナのことを放っておけないのだ。もともと、責任感が強く、クラスでもリーダーシップをとりがちのいのだ。カトナのようなタイプの子は放っておきがたい。
 はぁ、とため息を吐きながらも、いのはカトナとの会話を続けた。


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