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スミレの花が咲いて
スミレの花が咲いて
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ばこれでどうじゃ」
 今度は幻術であった。妖術使いが何人にも分かれた。そして若者を取り囲んだ。
「さあ、どうするのじゃ」
「くっ」
 若者は足を止めた。そして妖術使いを見た。彼等は笑いながら若者を取り囲んでいた。
「わしは一人ではないぞ。さあ、どうするつもりじゃ」
「早く倒してみよ、ふぉふぉふぉ」
 若者は妖術使い達を見た。だがどれが本物かは全くわからなかった。これには彼も困った。
「こうなれば」
 彼は意を決した。そして目を閉じた。
「何を考えておるのじゃ」
 妖術使いはそれを見てせせら笑った。彼の行動を頭から馬鹿にしていたのだ。
「目を閉じていれば何もできはせぬじゃろうが」
「それはどうかな」
 だが彼はそれにも臆するところがなかった。
「少なくとも貴様の幻影に惑わされることはない。そして」
 彼は斧を構えながら言った。
「貴様の声は聞こえる、そう」
 斧を振り上げた。
「貴様はそこにいる!」
 そして斧を投げた。それは唸り声をあげて飛び妖術使いに襲い掛かった。そしてその仮面を砕き額を割った。それが致命傷であった。
「よし」
 彼は目を開けてそれを見た。そこには仮面を割られ頭から鮮血を流す醜い老人がいた。
「あがが・・・・・・」
 彼は頭を割られたまま呻いていた。だがまだ立っていた。
「まさかわしの術を破るとは」
「確かに貴様の姿は分かれていた」
 彼は言った。
「しかしその声は一つだった。それでわかったのだ」
「ぬかったわ・・・・・・」
 最後にそう呻くとその場に倒れ込んだ。そして彼は事切れた。若者はそれを見届けるとその頭の皮を剥いで持って行った。それを倒した証とする為であった。
 村に帰ると皆彼を出迎えた。白鷺と妖術使いを倒した彼は忽ちのうちに村、そして部族の英雄となったのである。だが彼の活躍はそれで終わらなかった。
 村に病が流行るとそれを癒す草の根を探しそれを持ち帰り、そして敵の部族を打ち破った。最早彼は部族にとってなくてはならない存在であった。だがそんな彼にも一つ足りないものがあった。
「もうそろそろ身を固めてはどうじゃな」
「はあ」
 長老や両親にそう薦められても彼はいい顔をしなかった。彼にはまだ意中の者はいなかったのである。そして彼はそのまま一人身でいた。そんな彼を心配する声もあったが彼は一向に結婚する気配を見せなかった。それが周りの者にとっては心配の種であった。しかしそれでも彼は結婚どころか恋人を作ることもなく一人のままであった。
 ある時彼は旅に出た。目的は部族を脅かそうとする冬の巨人を倒すことであった。その巨人は骸骨の様な姿をしており通り過ぎたところを冬の世界に変えてしまうのである。そして出会
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