師匠と弟子
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
“行け”とは言うけれど、“連れて行け”とは一言も言わない。つまりそれは“置いていけ”という事で、それでもパラゴーネを置いていく事なんて出来なかった。
自分を傷つけてまで扉を開いてくれた彼女を置いていくなんて、考えられなかった。
「――――――快捷行けっ!ここまで来て何を遅疑する!?ティア嬢の為にここまで来たんだろう!?」
その通りだ。
ナツ達はティアを助ける為にここに来て、パラゴーネ達と戦って、最終的にティアを助けて全てが終わるはずだった。
だけど、最後の最後に躊躇う。
仲間を見捨てる事が出来ない妖精の尻尾の特徴が、こんな所で邪魔をする。
「……行くぞ」
―――――――そんな時だった。
パラゴーネを静かに降ろしたグレイが立ち上がり、扉の方へと歩いていったのは。
「グレイ!?」
「お前っ……」
1番パラゴーネに近いはずのグレイが、背を向ける。
ルーシィの驚く声とナツの声が静かな塔の中に響き、パラゴーネは、まるでその行動が正しいと言うかのように緩やかに笑みを浮かべた。
「おいグレイ」
「コイツがした事を無駄にしたくねえんだよ」
何かを言いかけたヴィーテルシアを遮って呟くと、グレイはドアノブに手を掛けた。
そのまま迷う事なくガチャリとドアノブを回し、冷たい風に髪やコートの裾を揺らしながらグレイは出ていった。
バタン、と扉が閉まり、また静かになる。
「……行くぞ」
「エルザ…」
その後ろ姿を見つめていたエルザが呟き、ドアノブを回す。
床に横たわるパラゴーネに目を向けたヴィーテルシアもその後に続き、ナツとハッピーも必死に顔を背け、ルーシィもルーに肩を貸しつつ耐えるように唇を噛みしめ、アランも謝罪の言葉を呟いて、その後に続く。
――――――そして、扉が閉じられた。
また、孤独だ。
ここまで裏切っては、自由を第一とする血塗れの欲望にも戻れないだろう。どちらの味方に付こうと自由だが、この計画は“話していい事”と“悪い事”がハッキリしている。
“最大の秘密”は何とか守った。ただ、それ以外の全てを話してしまった。
(まあいいか……納得はしているし)
彼等は最後まで葛藤していた。あの表情を見れば一発で解る。
それでも何とか判断して、どれだけ心残りがあろうと前に進む事を選んで、ちゃんといい結果を引っ張っていける立ち位置に戻っていった。
それでいい、と思う。自分を一時的にでも仲間だと接してくれた彼等が望む結果になるのなら、多少の犠牲は当然払うべきだ、とも思う。
その犠牲は自分で十分だ。それ以外の誰かが辛い思いをする必要はない。たとえ結果が彼等の表情を歪めるものだったとしても。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ