師匠と弟子
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ミラの腹辺りに向ける。
「旋風!」
「が…あっ!」
防御の体勢も取れずに、ミラは杖の先から放たれた風の一撃を喰らう。
バランスを崩した状態を直すように翼がミラの体を支え、床を靴の踵で滑りつつ、ミラは吹き飛ばされると同時に始めたあの長い詠唱を終える。
「大火円盤!」
「雷撃!」
炎の鎖で繋がれた炎の円盤を、空いた右手でぐるりと振り回す。
壁に爪痕を残した一撃を落とすようにエストの雷が炎の鎖を断ち、円盤は床にも跡を残しつつ消えた。
《ミラ!》
アルカの声が飛ぶ。
それに答えるようにこくっと頷いたミラは、もう1度床を蹴った。
扉が開くのを、待っていたはずだった。
なのに、やっと開いた扉から出ていく者は誰もいない。
「パラゴーネ…大丈夫?」
ハッピーが問う。
グレイに抱き起こされるパラゴーネは目だけをハッピーに向けて「寧静だ」と呟くと、すいっと目線を上にあげた。
その先にいたエルザと目が合う。
「エルザ・スカーレット」
「…何だ」
「ギルドで私が歪めた剣を、発露してほしい」
ギルドで抗争が起ころうとしたあの時、パラゴーネが折り畳むように捻じ曲げたエルザの魔法剣。言われた通りにエルザがそれを別空間から出す。
変わらずぐにゃりと捻じ曲がったままのそれを見たパラゴーネは、静かに右腕を伸ばした。
細く小さな指の先に、淡い桃色の光が柔らかく灯る。
「これで…復元完了か?」
「……!」
指先から零れた光が剣を包み込む。
すると、ギギギ、と少し耳障りな音を立てながら剣が形を変え、最終的に元の―――――捻じ曲げられる前の姿を取り戻す。
静かに目を見開くエルザに、パラゴーネは口角を僅かに上げた。
「気がかりになるな、切れ味等も衰微はしていない。ただ容貌を復元しただけだ」
そう言ってエルザから目を外したパラゴーネは、目の動きだけで全員を見回した。
心配そうにこちらを見つめるナツ達を見てどこか嬉しそうに微笑んだパラゴーネは、誰とも目を合わせないと言うように目を閉じ、口を開く。
「急け、もう残余時刻が少々だ。ティア嬢を救出不可能になる」
言われて振り返ると、扉には残り時間が映し出されていた。
残りは00時間57分31秒――――――シャロンとの戦いも考えると、早く本宅に向かわなければならないだろう。
ナツ達だってそれを解っていた。頭のどこかではティアを早く助けに行かないと、と考えている。
だけど、動けなかった。
「……何をしている、快捷行かないと事足りなくなるぞ」
もう1度、焦れたような声でパラゴーネが言う。
それでも、誰1人として動かない。―――――動けない。
だってパラゴーネは、
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